ゆっくりでも続いて欲しい作品
★★★★★
たまに神がかったり、普通の人に戻ったり、なんとも憎めない教授。
お母様とのエピソードはほかの方も書かれているようにとても良い。
自分は存命の父の老化を扱った話も、なんともキた。
他人なら流せる老人の一言・動作が、親だと何故かイラっときてしまうのは教授も一緒なんだなぁ…。
でもやっぱり、教授なりの、そしてまわりの個性のある人達の言葉で、前を見て楽しんでいこうか、とボチボチ歩いていってくれる世界観は、読んで落ち着く。
キテレツなお父さんと、その再婚したイギリス人の奥さん、好きだなぁ。
あと、不用意な一言で奥さんを怒らせ、隠されてしまった話で、万年筆を見つけ、
気持ちよくインクを滑らせ書いている推薦書のアップで爽やかに終わるページなど、よくよく見るとシュールな落ちが付けてあり大好きであります。
表紙はお母さんと柳沢教授
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教授は、いつも事実(ファクト)と論理(ロジック)から必然を導きます。
また、そうしてできたそれぞれの必然を組み合わせて、真理を構築することを求めます。
これこそ、学びだといえます。
また、教授は”わからない”ということが大好きです。
”わからない”は、割り切れない気持ちと言いかえることができるかも知れません。
人間が好きなんですよね。
ロジックとファクトで生きれば四角くなります。インヒューマン。
人間が好きだと人が集まります。場ができる。
そんな、「四角い仁鶴がまぁるく、おさめまっせ (byバラエティ笑百科)」的おもしろさが、長い人気の理由でしょう。
で、やっぱりこの巻では、おかんの死が印象深いストーリーになっています。
教授の子ども時代の出来事ですが、教授らしく割り切れない感情を受け入れていきます。
読めば読んだ人の数だけの想いが、うかぶと思います。
老いていずれは死んでいく父と母と私
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両親のことを思わずにはいられなかった。涙が出た。
もっとやさしくしよう。もっとやさしく出来るはずだ。
読み終わる前と後では、表紙の絵の持つ意味が全然違うこと・・・
最近の作品は特に強く老いや死という避けては通れない圧倒的な現実が色濃く写し出されているような気がします。
人によっては暗くとっつきにくい作品かもしれません。
ですが、私にとっては教科書でありなによりも心の支えであります。
もっと勉強すればよかったと思うのですが、死ぬまでが勉強なのですから決して遅いことはないはずです。
死ぬまでフィルターを磨き続ける。
そう思わせてくれる非常に希な作品です。
本当に多くの方々に読んでもらいたい、傑作中の傑作です。
父と、そして母と。
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柳沢教授の父、母とのエピソードは、無論これが初めてではない。
これほど胸打たれる話がこれまでなかったなどとも言い難い。
それはこれまでのこの作品にとって失礼なことだ。
しかし、本作もまた、「柳沢教授」作品群にあって、静かに一つの高みに立った一冊だ。
ほとんど時が止まっているはずのこの世界を、
過去のエビソードを長回しすることでうまく切りまわす。
知り合いはどんどん増え、人間関係は広がるが、時間はほとんど経過しない世界。
だが、そんな世界にも緩やかな経過がある。それが父のエビソード。
そしてラストの母を巡るエピソード。
読後に、あらためてコミックスの表紙がこれほどの感慨をもたらすとは!