鹿が本当にしゃべりそうな気がしてくる。
★★★★☆
「鴨川ホルモー」があまりに面白かったので、この作品も読みました。
この作品も面白い。鹿がしゃべる、とか、自分の顔が鹿になる、とか、
非現実的な話なのに、巧みな描写で、非現実性を感じさせない。
主人公の優柔不断な性格設定や、物語の構成(止むを得ない事情で
闘って勝たねばならない状況に追い込まれる)は、ホルモーと似ています。
闘う手段が前作のホルモーの方が私には面白かったけど、剣道をやっている
人なら、こちらの方が面白いかもしれません。
奈良の描写も素晴らしく、奈良に行きたくなります。
鹿はしゃべってはくれないだろうけれど、じっと見てしまいそう。
鹿男あをによし
★★★★☆
タイトルもいいし、内容もちょっとしたファンタジーで面白かった。
ドラマも見てみたいと思った。
「オンリーワン」な万城目さん
★★★★☆
本書は、紹介の仕方が難しい小説です。
実際に読んでみればすぐに面白いと分かるのですが、その内容を一言で説明するのはとてもむずかしい。
というわけで、本書の特長を、箇条書き風に、ピックアップしてみました。
1.「学園青春小説である」
主人公は冴えない大学院生&臨時高校教師。少しばかり自意識過剰なダメ男が周りの人々や鹿(?)との関わりを通して成長していく様は、
まさしく学泉青春小説というにふさわしい流れです。
2.「歴史小説である」
本書では、実際に登場することはありませんが、古代神話上の神々が、重要な役割を演じています。
3.「ファンタジー小説である」
中年おやじの声で話す、ポッキーが大好きな「メス」鹿が、普通に町を闊歩できるのは、本書がファンタジー小説だからです。
4.「パロディー小説である」
本書の解説者も指摘していましたが、本書前半部の物語展開、キャラクター設定は、夏目漱石の「あの小説」を彷彿とさせます。
このように、本書は色々なジャンルがごちゃ混ぜになっているのですが、
それらを適度にブレンドして一大娯楽小説へ仕上げるのが、著者の得意技なのでしょう。
このような作風の作家はほとんどいないので(森見登美彦さんぐらいでしょうか)、
当世風の言葉を使うなら、万城目さんは、「ナンバーワンよりオンリーワン」的な作家と言えるかも知れません。
ともあれ、これからも注目したい作家です。
奈良における60年ぶりの神無月の出来事
★★★★★
大学の研究室から奈良の女子高に2学期だけの予定で赴任した主人公は剣道部の顧問になり、奈良、京都、大阪の3校対抗試合に臨む。 一方、雌鹿が渋い男性の声で「さあ、神無月だ。出番だよ、先生」と話しかけてきた。奇想天外な出来事に巻き込まれた「鹿男」はこの国を救うことができるのか。
章立てとしては葉月(8月)から霜月(11月)に分かれていますが、実質は長月(9月)と神無月(10月)の2ヶ月間の奈良での物語です。1800年前から60年ごと「神の無い月」にしなければならないことがあると雌鹿から聞き、ある物を「狐」から受け取って来いという。もしも間に合わなければ「この国は滅ぶ」と。
これは面白かった。剣道の試合はハラハラしましたし、ラストも素敵でした。「鴨川ホルモー」と共にお勧めです!
えーとねえ…
★★★★☆
面白くなかった訳じゃありません。
読んでて不快な気分にもならなかったし、多分再読もするだろうし。
ただ、レビューの高評価の嵐に驚いています。
…ていうか、ドラマのCMのイメージやタイトルからして、私はこの話がコメディーなんだと思い込んでた様です。
ゲッツ板谷やナンシー関みたいに、露骨に笑わせ様とはしてない文章かもしれない。
しかし村上春樹の「かえるくん、東京を救う」や「羊を巡る冒険」みたいなユーモアのある文章や展開なんじゃないか?と。
で、思いの外真面目な文章と物語に軽く肩透かし、と。
とにかく中盤までは退屈でした。
期待しすぎたんでしょうね…。
(しかし鹿が喋る話と聞いたらそりゃあ真面目な話じゃないと思うだろー)