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漢文脈と近代日本―もう一つのことばの世界 (NHKブックス)

価格: ¥1,019
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本放送出版協会
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訓読文の重要性を再認識する ★★★★☆
 かつて漢文の学習は、一つの全体性を備えた知的世界に参入することだった(p20)。典故を踏まえる漢詩の作法は、歴史の中に自らを位置づける行為だった。だから「漢文脈」。

 著者は脱-漢文脈を志向する訓読文こそが近代の文体として重要であり、「言文一致はそこからの展開」(p116)でしかないことを、訓読文の分離-独立、翻訳から教科書、法令まで、国民国家という「均質な空間」(p102)に相応しい「万能の文体」(p101)としての成長・拡大過程を通じ、説得的に論じている。さらに著者は、「明治文学の起点は、言文一致体小説の成立ではない」(p116)と踏み込み、「小説が近代文学の中心的なジャンルになったこと」を「西洋文学の移入や江戸小説の展開」ではなく、「漢文脈という観点から」論じたい、とも言う(p119)。ただ、最後の点には混濁があると思えた。

 著者は漢文脈の二重焦点(士人的エトス=公vs文人的エトス=私)から近代文学の生成を導こうとする。その際の鴎外・荷風の位置づけは見事だが、結局は透谷・忍月らが「感傷」を「恋愛」へと発展的に誤読したという話で、つまりは「西洋文学の移入」ではないか? 著者自身、「東アジアにおいて、一つの(全体性を備えた)世界を構成しうる文脈は漢文脈のみであり、公vs私のように、対抗原理は漢文脈内部で働いて外部は見えなかった。だからこそ、脱-漢文脈のためには(写実主義や自然主義のような)外部に根拠が必要とされた」(p213)と述べている。