まず啓蒙主義の流れが語られ,いまもう一度知の統合を目指すべきだと主張される.そして自然科学が到達してきた方法が説かれる.
続いてヒトには本性があること,それを元に社会科学と統合していくべきこと,さらに倫理についてもその知見を踏まえるべきことが説かれる.
このヒトの本性が人の進化ときってもきれないことの説明にシロアリの倫理が示されるところは今読んでも非常に新鮮でわかりやすい.(もしシロアリが倫理を持てば暗闇への愛から始まって全くヒトとは異なる倫理が自明として扱われたろうというもの,ここだけでも読む価値がある)
社会科学のところもすばらしい,文化相対主義では奴隷制度を否定できないではないか.社会科学の現状は自然科学がナチュラルヒストリーであったときのままであり,そこからさらに踏み込まなければというのも鋭い指摘である.経済学のヒトの選好に対する態度についての批判はいまや行動経済学により少しずつウィルソンの主張に沿って進行しているようである.
そして科学と価値観を全く分けようとする立場を超えてさらに深く踏み込むと価値観そして倫理(さらに政治学は応用倫理だと言い切るのも素敵)を定めるためにはヒトの本性の理解が欠かせない,そしてそれは環境保全の考え方につながるというとするその考え方がよくわかります.