短時間で医の倫理について学ぶのによい本
★★★★☆
本書の「はじめに」の2つめの文で「そもそもわが国では一昔前には医の倫理については具体的に深く考える人も少なく、またそれで済まされてきた」と書かれているのを読んで、愕然とさせられる一方、ゆえに医の倫理に係る事件が発生し、それを防ぐ意味もあって本書のような本が近年、増えたのかなあと考えさせられました。(技術者の倫理といったものも近年、課題になっています。)
本書は末期患者の医療、生殖医療、医学研究など、図表が多く用いられ、少ないページの中で効率よく理解できるように工夫されています。少し残念に思えたのが、末期患者の医療の中で解説される「死」が臓器移植が適切に行われる場合に限り認められる「脳死」について歴史などを含めて多くの言葉が割かれいるのに対して、心臓死基準についてはほとんど触れられていない点。重要な点であることからもう少し言葉を割いて欲しかったと思います。