死んだはずの「ぼく」の魂にむかって天使が言った。「おめでとうございます、抽選にあたりました!」。そうして、ぼくは輪廻のサイクルに戻るために、下界にいるだれかの体を借りて(天使業界では「ホームステイ」というのだそうだ)前世で犯した悪事を思い出さなくてはならなくなった。
乗り移ったのは「小林真」という自殺したばかりの14歳の少年。ところが、真は絵を描くのが得意な以外は、親友と呼べる友だちもいない、冴えないヤツだった。父親は自分だけよければいい偽善者で、母親はフラメンコの先生と浮気中。しかも、好きな女の子は、中年オヤジと援助交際中ときた。しかし、ホームステイの気楽さも手伝って、よくよく周りを見回してみると、世界はそんなに単純じゃないってことが次第にわかってくる。
森田芳光の脚色で映画化もされた、多くのファンをもつ1冊である。著者は、講談社児童文学新人賞受賞作「リズム」でデビューした児童文学界のトップランナー、森絵都。シナリオライターだった著者による本書は、生き生きとしたセリフが心地よく、軽快なテンポで一気に最後まで読ませる力をもっている。そして、周りを見渡せばすぐにいそうな登場人物との距離感が、物語をよりリアルにみせてくれる。
中学生が主人公である本書は、中学生に読んで欲しい本ではあるが、「世界はたくさんの色に満ちている」というテーマは、どの世代にも共感できるもの。かつて中学生だったすべての大人にもおすすめしたい。(小山由絵)
たかが数十年のホームステイ
★★★★☆
児童向けという事もあって重いテーマなのにサクサク読めて2日で読み終わりました。
人生って辛い事、悲しい事、悩みはつきないけど、私の魂はいわば数十年の寿命である私の肉体を借りているだけ。
天使が言っていた「たかが数十年のホームステイ」と考えたら悩んでいた事も大分気持ちが楽になりました。
本当に素敵な話なので、老若男女関わらず、読んでほしい一冊です!
わからないんだ
★★★★★
未来なんてわからない。
この一瞬のあとに何が起きるかなんてわからないんだ。
死にたいって思った時、もしその時に死んでたら。
その一瞬あとの幸せなんて見えないんだ。
幸せになれるかもしれない。
楽しい生活が待っているかもしれない。
世界は“かもしれない”でできている。
なのに、今を絶対だと勘違いして人は死のうとする。
世界を誤解してるかもしれない。
自分を誤解してるかも。
自分は変われるだよ?
少しのきっかけと勇気さえあれば。
それがちっともわかってないんだ。
そんな信念を私に教えてくれた一冊でした。
おもしろい話だし、それでいいんじゃないかなぁと思います。
★★★★★
書店の宣伝でつられて読んでみたら
おもしろくて出張の新幹線で読んでしまいました。
いろいろと批判もあるみたいで、そういうレビューをみると
「そっかー」と思ってしまいました。
でも、「お話」はすっと読み切れて、おもしろかったら、
それはそれでもう最高な存在っていう気もしますし、
僕にとってはこれはそういう本でした。
40にもなる男ですから、この本を読んでだれかに感情移入する
っていうわけでもないので、そのあたりも影響してるんだと思いますが…
(でもそういう意味では、ここに出てくるお父さんはちょっと食い足りない)
命の大切さとか何とかというメッセージで本を読むわけでもないし、
自分のいるこの世界じゃない別の世界に入れて、
その本以外からは得られない記憶をもらえるのが
「お話」だと思っています。
あと、読んだ人と話してみたいのは、プラプラが自分にもいたらいいと思うかどうか、
ですね。
一気に読める、面白い作品。
★★★★☆
何の変哲も無い家族の話なのですが、視点を変えるとこんな風になるんだなと、感心して読み終えました。
爽快感もあり、???な部分もあり、読み終えるごとにその時の体調なんかによって印象の変わる作品なのかもしれません。
長編アニメーション映画も公開中ですが、お勧め順序は、原作本→映画→原作本かなあ。
映画と小説の両方共大好きですね
★★★★★
映画を先に観てから、本作を読みましたが、映像、活字それぞれの特性を上手く活かした表現が素晴らしく、またお互いを補完しあっています。是非両方ともお試しいただきたい。
原作のエッセンスを咀嚼し抽出して映像に適した表現にきちんと置き換えておりました。個人的には映画→小説をオススメします。
映像では風景、人の容貌、音(学校等の日常の音。昔に引き戻されました)の使い方が素晴らしく、また早乙女君と親しくなるきっかけの玉電跡地巡りのくだりが何とも自然で原作より効果的。また家族会議のくだりも小説より良かったです。映像ならではの効果でした。
小説では映画ではあえて割愛した父、兄の抱えた問題について書いていました。また母から真への手紙も文章ならでは活きてくる部分でしたね。また一人称の語りが色々な背景を覆い隠していて極めて効果的。活字のなかなか読めない私が途中でやめられず一気読みしてなんとも幸せな気分になりました。