自由と自由の価値について本格的に論じた大著ながら
論旨明快で,すらすらと最後まで読み通せる.
特に,ルソーに始まるフランス系思想の系譜と
ヒュームに代表される英国系思想の系譜を対比させて
議論し,それぞれの文献を脚注に示してあるので,
自習する際にも極めて便利である.
7巻巻末にある付録も興味深い.ハイエクは自らを
保守主義者ではないと主張する.すなわち,自由を
擁護する際,保守主義は有効な手段の一つではあるが,
それ自体が目的ではない,ということだ.
ただし残念なのは訳文の一部が誤訳とまではいえないが,
ぎこちない日本文に困惑させられることがある.