「旧バッハ全集」に基づいた「原典」で、おすすめできません
★★★☆☆
原典版と銘打っていますが、19世紀に編纂された「旧バッハ全集」に基づいた「原典」のままなので、最新の「新バッハ全集」の研究成果を踏まえておらず、最新の原典版と違うところもあり(例えば2番前奏曲18小節とか)、内容的にはイマイチです。
解説もほとんどありません。
全音なら多少高くても市田版がおすすめです(第1集のみ)。あるいはヘンレ版かウィーン原典版をおすすめします。
3番の嬰ハ長調はシャープが7個もあり、現在は普通使われない調なので、巻末に異名同調の変ニ長調(フラット5個)への書き換え版が載っていて、これは取っ付きやすく便利です。
もっとも嬰ハ長調も、ハ長調の全ての音を半音上げると考えれば、見かけほど譜読みが難しいというものでもありません。
ちなみにクロール編の第2集の3番は、バッハが書いた嬰ハ長調ではなく、変ニ長調書き換え版のみが収録されているので、これはちょっと問題だと思います。
バッハは楽譜でかなり違いがでます
★★★★★
この曲集はバッハ以降の作曲家やピアニストのバイブルとも言われています。また、バッハの楽譜は校訂版、原典版共にかなりの数に上るでしょう。私の気がついたことを連ねてみますと、
1・原典版でも監修者により、指使いにかなり差があること
2・3声以上のフーガの声部がわかりやすく書かれているものと、見にくい楽譜がある
3・原典版と併用して校訂版も見た方がよい・・・等々
まず、1ですが、特にフーガの声部が多い曲での指使いはフレージングに大きく影響するので、良い版を選びましょう。日本の楽譜は比較的親切です。この全音の譜も良いと思います。
2については、楽譜を幾つか並べてみて下さい。音符の大きさ等も出版社によって差があります。フーガの譜面が複雑なものを見比べて、見やすい物を選ぶとよいと思います。
3ですが、多くの著名なピアニストも幾つかの校訂版と原典版を併用しています。 代表的な版では、ドイツのブライトコップ社のブゾーニ編、これはロマン派の思想を基にしたといわれています。日本では、井口基成師の春秋社あたりでしょうか。、特に変わっていて面白いのはブダペストのバルトーク編等々・・しかし、校訂版はあくまでも原典版をどのように解釈して演奏するかの手助けです。
参考に音源を聴くのもお薦めです。バッハといえば、グレン=グールドも外せませんが、ケンプやリヒテルも良いかも。ピアニストによって、テンポもアーティキュレーションも違うので、自分の好みの演奏への参考になると思います。
また、この全音の楽譜は、輸入版より手軽に買える価格も魅力です。