映像化したくなる短編集
★★★★☆
古典的なゴーストストーリーの名編を読みたいという人にはぜひオススメします。
私の期待する古典というと19世紀〜20世紀初頭の英国モノで霧の都ロンドンや郊外の古びた屋敷のイメージですが、ここに収められた作品はまさにそれにぴったりのゾっとしつつも切なく美しい作品ばかり。私のお気に入りは、育児ノイローゼのつらさも思わせる「ハリー」、ジョージ・サンダースのような名優主演で映像作品を観てみたい「遊び相手」、夫婦の絆を逆説的に描く「電話」や
いかにも男性的な異様な迫力に満ちたエイクマンの「鳴り響く鐘の町」、民間伝承のような「エリアスとドラウグ」あたりでしょうか。まえがきにあるとおり女性小説家の作品のほうがナイーブで残酷な感覚が非常によく描かれていて出来がいいと思いますが、この「あらゆる芸術分野においてゴーストストーリーに限っては女性のほうが男性よりも遥かに適正がある」という説をやたらに熱く語るダールのまえがきが非常に面白いです。律儀で純粋な人なんだなあと微笑ましい気分になりました。
買いです。
★★★★☆
「チョコレート工場の秘密」の映画化で再び脚光を浴びているロアルド・ダールによる、幽霊括りのアンソロジーです。ずいぶん昔のものも多いのですが、短編の名手のお眼鏡に適った作品ばかりなのでいずれ劣らぬ出来映えです。「幽霊」という言葉からなにを連想するかは個人によって様々だと思いますが、自分に限っていえば、これらの作品にはさほど「幽霊」のフレイヴァーは感じなくて、とてもよくできた小品集といった印象を受けました。ただ、作品の出来不出来云々とはまったくの無関係ですが、もっと若い時期に読んでいれば、もっともっと楽しめたように思います。
海外の良質な短編小説
★★★★★
故・向田邦子さんは「一度でいいからダールのような短編を書いてみたい」と生前言っていたそうだ。
本著は、そのロアルド・ダールの短編集。訳文がいいのは、原文の良さとは無関係ではないだろう。小気味の良いスピードで話が進む。向田邦子さんの言葉を知らない人でも、海外の良質な短編小説の姿を知ることができるだろう。ちょっと怖いけど。
思い出すと怖い
★★★★☆
しみじとした恐怖がメインで、KWAIDANの趣がありました。焦らずにゆっくりと読めば、ストーリーは把握できるし、短編集で一作一作読み飽きない。読んでいる内に、一語一語訳を当てはめなくてもスッと入って来る時があります、和書を読む時のように。オチもあるし、私のような英語学習ビギナーには英語に触れる意味ではうってつけではないでしょうか。
ダールの幽霊話
★★★★★
さすがダールが集めた作品だけあって、思わずぞっとするような話ばかりです。幽霊話が好きな人も、そうでない人も、この本は楽しめると思います。特にお勧めは、「ハリー」と「W・S」と言う話です。怖い思いをしたいという方は、ぜひ手にとって見てください。