アメリカ文学史上の傑作だが、決して簡単とは言えない
★★★★☆
この話に出てくる登場人物は、全員何らかの精神的な瑕を負っており、かなり屈折している。ジョー・クリスマスしかり、ハイタワーしかりである。この話を十全に理解するためには、アメリカ南部における文化意識や精神構造を知っていることが望ましい。英語だが、フォークナー特有の心理描写がかなり込み入っており、これに慣れるのは容易ではない。一方、台詞部分は所謂標準英語からはずれた用法が多いものの、理解しやすく、全体として話の筋を追うのにはさほど苦労しない。いずれにせよ、楽々読み進められるような代物ではなく、フォークナーやこの作品の評伝に目を通し、背景知識を得た上で読むのが良いかもしれない。