育児の原理原則
★★★★☆
100ページ余りの新書である。
題名は育児マニュアルとなっているが、内容は具体的なマニュアルというよりも、育児をする上での原理・原則をテーラワーダ仏教の立場から述べたものとなっている。
であるから、題名のつけ方はちょっと疑問。
本は、二部に分かれており、第一部は、育児をする上での親の心構えがいくつか述べられている。
中には私にはあたりまえのことと思うところもあったが、一人納得したのは、「愛情ではなく慈しみで育てなさい」という言葉。
「親の愛情は危険な猛毒」とも言っている。
ここでの慈しみとは、「この子は私のものではない。地球上に生まれた大事な人間です。間違いを起こさず幸福でいて欲しい。責任感のある立派な人間に育って欲しい。」という気持ちのことと書いている。
普通の親なら誰でも子供を愛情いっぱい育てたいと思うであろうが、親の過干渉などは、まさに愛情が猛毒となった状態であろう。自戒をこめてここに記しておく。
第二部は、「小学三年生からお坊さんへの質問」との題で、
「私は何のために生まれてきたのですか?」
「今何をすればいいのですか?」
など、子供に答える形式となっている。恐らく、自分の子供に聞かれたときの参考にとのことで、載せてあるのであろうが、そのまま子供に言うだけでは、ちょっと寂しい。
自分なりに答えを用意しておかなくてはと考えた。
子供をどの塾に行かせようかとか、いい大学に入るためにはどうしたらいいかと考えるのも大切とは思うが、その前に、「子供にどういった人生を送って欲しいのか」そういったことを考えてみるきっかけになると思う。
人類の教師としてのブッダ
★★★★★
「ブッダの育児マニュアル」。
このタイトルを目にされた方は、何故ブッダが育児論などを?と思われるかもしれません。
日本仏教ではブッダは冠婚葬祭につきもの、それ以外には関係なし、とのイメージが強いですね。
しかし、テーラワーダ仏教では、ブッダを人類史上最高の教師と考えています。
ですから、人間の一生にとって大事な仕事である育児に関しても、ブッダは的確なアドバイスをされているのです。
マンガラ・スッタ(吉祥経)、シンガーロワーダ・スッタ(六方礼経)などを縦横無尽に駆使した解説は、経典をただありがたいものとして奉るのではなく、現代に生きる人々が行動の指針として使用できるマニュアルとしてよみがえらせています。
お値段も手ごろで、テーラワーダ仏教を学び始めの方たちにもお勧めできる一冊となっています。