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勝負 (中公文庫)

価格: ¥720
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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勝負師の生き方、考え方が如実に伝わる書 ★★★★☆
升田幸三の全盛期を知る人も少なくなりました。現役時代の鬼の形相とたたえられた凄みのある風貌が偲ばれます。晩年は好々爺の雰囲気を漂わせていましたが、棋士ではなく将棋指しといえば、升田幸三をイメージするという一時代を築きました。誰もが思い浮かばないようなあの華麗な差し回しが脳裏に浮かんできます。

本書は、その升田幸三がサンケイ新聞社から1970年に発行した『勝負 人生は日々これ戦場』を文庫化したもので、升田の口述筆記のような体裁を取っています。広島弁の口調がどこか憎めず、飄々とした味わいが感じられました。

最初の発行から40年経った今でも購入でき、読まれていることに、この内容の普遍性があると思われます。人生訓のようであり、先の見えない時代の羅針盤のような言葉が散りばめられていました。

棋譜は一切載っていませんし、様々な棋士の名前も登場しますが、そのような知識がなくても十分に楽しめるでしょう。
特に坂田三吉が、若い頃の升田の将棋を見て「あんたァ、天下とりまっせ」や「ちいちゃな将棋では打たれへん。八段の芸やないと打てん手や」というくだりは、天才が天才を語る評価として受け取りました。
勝負師とは、ゲタをはくまで勝負を投げない者をいうという言葉も含蓄がありました。升田が言うように、一発狙いの者をいうのではないということも理解できます。

内容は、将棋の道へ(少年時代、家出、弟子入り)、駒の哲学、勝負、上に立つ、後から来る者へ、世間、思い出の人びと、女・妻・家内、身辺雑記、という項目に整理されています。
「勝負」を含めた物事への処し方を示してくれる本 ★★★★★
著者は将棋界においてはほぼ知らない人のいない人物と言って良いと思われる。

自身も名人位を得たが、木村義雄、大山康晴などの他の名人位を得た(超のつく程と言って良い)実力者達にとっての良き好敵手であった人物である。

本書はその著者の少年期から将棋棋士となって執筆時(昭和四十五年、当時五十二歳)に至るまでの本業としての将棋、趣味である囲碁などを中心とした勝負観、仕事観、人生観、人物観、家庭観、社会や時代に関する当世評など幅広く諸処の話題について記した随筆本である。

他のレビューにもある通り、文体よりおそらくは口述筆記であることが窺われる。もちろんその殆どは著者の人柄を反映している故と思われるが、それも幸いしてか各話とも非常に軽妙にリズム良く記されており、テンポ良く読み進めていくことが出来る。

しかしながら、その内容には多くの示唆を含み、考えさせられる箇所も少なくない。

駒を用いた人物観、勝負に臨んで心掛けること、勝負にまつわる人物観、上に立つ者としての仕事観や後進への助言など今の時代に共通して参考となる箇所も少なくない。

特に人物観においては阪田三吉翁などの棋士、吉川英治、志賀直哉などの作家、平賀敏などの実業人など、各界著名人との邂逅も非常に興味深い。

いずれの話題も数多くの修羅場を含めた著者の豊富な経験と見識に裏打ちされており、既に達観の域に達しているように感じられる。また、文中にもある通り、長く病を患っていたことなどもより一層の深みを与えているように感じられる。

本書の題名にもなっている「勝負」を中心として、それら勝負事や仕事、人生の示唆となる様々な話題に事欠かない書物である。

人生や仕事を充実させる上で何か少しでも得るものが欲しい、将棋や碁など勝負事を嗜み、成績や能力を向上させる上で何か少しでも得るものが欲しい、著名人のエピソードに興味がある等々の人にとって一読の価値がある書物と思われる。
“Life Is A Game” ★★★☆☆
 本書は新聞連載を経て1970年にテキスト化された『勝負―人生は日々これ戦場』を
文庫化したもの。口述筆記なのか、一貫して話し言葉の形式で展開される。
「人生は、将棋に似ている。どちらも"読み"の深い人が勝機をつかむ。"駒づかい"の
うまいひとほど、機縁を生かして大成する。……私は将棋の世界に生きてきた人間だから、
何を考えるにしても、すぐ将棋と結びつけて考える。人生と将棋が似ているというのも、
そういう角度からものを見ることが習性となっているからであろう。……この本は、そうした
発想から見た"勝負と人生"である」。
 そうして自身の幼年期のエピソードにはじまり、棋士仲間や財界人との記憶など、
日々の出来事を将棋に照らし、あるいは逆に盤上の出来事を人生に照らし語る。

 人類史上の18番、「昔に比べて今の連中ときた日には……」が40年前にも
今と変わらず展開されることに少なからず辟易とさせられるところはあるが、
「新手一生」と一つの道を突き進んだ人間ならではの迫力を感じさせる一冊。

「弱いものは動くたびにヘタをして失点を重ねる」。
 例えばこの表現を将棋の格言とみなせばこのゲームの心得書とも読めるだろうし、
人生訓とみなせばそうとも理解できるだろう。もちろん升田の考えを把握するにも
絶好のテキストに違いない。
 ただし、そもそもの意図が若いサラリーマン向けと自身で明かす通り、基本的には
自己啓発系のテキストとして読まれるべき一冊。
 そういうジャンルが好きな方、あるいは升田その人が好きな方は読まれたらいいと
思うが、成功者の経験論から来る根拠薄弱なこの手の臆断が苦手な方には
あまり薦められない。
座右の書 ★★★★★
どのような道でも、一つの道を極めた人間の哲学は普遍的な輝きがあります。かつて寺山修司は、「人生は競馬の比喩だ」といいましたが、この本は将棋界に一時代を築いた升田幸三が人生を将棋に例えて語っています。その内容は非常に含蓄に富み、深い味わいを与えてくれます。

特に私が印象深かったのは、「いのちがけと遊びの境地」という部分です。升田は、「将棋というのは、勝負であるけれども、やはり娯楽であり、遊びのものである。とすれば、そこに厳しさがあり、鋭さがあっても、何か楽しいものがなければならない」といいます。そしてそれは、文章などの創作の世界にも通じていて、真剣勝負の文章のなかに遊びの境地があれば、読む人にもその楽しさが伝わる、そういうものが本物だ、と続けます。

この文章を読んで、様々な方面に想いを馳せました。ここではふさわしい例えではないかも知れませんが、犯罪を犯した者を徹底的にたたくだけではなく、そこに人間の生のリアルな側面を見て、どこかに救いを見出してやる、というようなことも必要なのかなあ、とおぼろげながらに考えました。

他の文章も、読めば必ず考えさせられます。この本は私の座右の書として、本棚の一番目立つとところに置いておくつもりです。

稀代の勝負師が人生を語る ★★★★☆
升田幸三は稀代の勝負師として、大山康晴との名勝負で世を沸かせた人物としても、また個性的な人生観の持ち主としても有名であった。その升田が自分の人生を語ったのが本書であり、期待を裏切らない内容であった。特に14歳の時に母親の物差しの裏に書置きを残して家出してから波乱の人生を過ごし、名人のタイトルを獲得するまでと、勝負についての升田哲学を述べる部分が特に面白い。また将棋人生で出会ったさまざまな人物を升田の目から見た内容も興味を引く記述が多い。ただ後書きで本人が述べているように、本書執筆の当初の意図が、若いサラリーマンに読んでほしいということだったようで、そのため将棋の考え方をサラリーマン人生に当てはめようとした前半は言わずもがなの部分が多々見受けられる。読者がそれぞれ自分の人生に照らし合わせて異なる感慨を持たせる方がかえって効果は大きかったのでないかと思われる。この点を考慮して星4つとしたが、幅広い年代の読者に訴える内容を持った良書である。