薬用(有毒)植物のスケッチが秀逸
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本書は題名こそ物々しいが、内容はれっきとした薬物史に関する教科書的なものである。主題のように、内容は「殺人」「呪術」「医薬」の3項目に分かれて進められている。
「殺人」の項目では、クラーレを初めとする有毒植物を初め、有毒海生生物(フグなど)、微生物(ボツリヌスなど)等と言った、自然界に存在する「毒」と人類との関わりを総論的にまとめている。殺人とはどちらかというか関連性はないといえる。
つづく「呪術」の項目では、特に中世ヨーロッパで多用されたと考えられているベラドンナやダツラといったれっきとした有毒植物から、民間信仰的に利用された植物などを、「幻覚面」に基づいた薬効からまとめたものとなっている。中世の歴史観に関する記述はやや弱いが、純粋に有毒薬物の本だと思えば問題はない。
最終章の「医薬」こそこの本の主題であるといえる。前章までに挙げられた毒を薬として使ってきた経緯をはじめ、ペニシリンに始まる抗生物質や抗ガン薬まで、内容は幅広い。広範な知識が得られる。
本書の特徴として、要所要所に挿入される植物のスケッチ絵が細部まで非常にわかりやすく参考になるということが挙げられる。いわゆるこの手の薬物教科書的内容の本にはなかなか見られない絵であるので、それだけでも見てみる価値はあるだろう。