ものすごい皺が刻み込まれた顔。とてつもない目ぢからを持つ顔。一枚一枚、じっくり見入ってしまうような顔をした人物が多い。
文章は英語の前書きのみ。もっと情報が欲しくなる時もあるが、写真データは日付と地名のみ。
「レンズを向けると、人は無意識にレンズの向こうの誰かを見つめようとする」と著者は言う。様々な顔を眺めていると、そうかもしれないと思えてくる。
戦争・紛争下の人々の表情には翳があるが、目には力強い光がある。紛争地の住民や避難民は「哀れな被害者」という面が強調されがちだが、この写真集からは人々の生命力と誇りが感じられる。

著者のサイトには、途上国で出会う人について「報道という概念を持たない人々は、私のことを単にカメラを持った異邦人の一人として見るので、素の表情が撮影できる」とある。但し、いきなりの撮影は非礼な行為と受けとられて命を失う恐れもあるので、撮影前に打ち解けて警戒心を取り去る工夫は必須である。

来日回数は多いのに、登場する日本人がわずかで寂しい。あるインタビュー記事は「日本人は誰もがカメラを意識するので、著者が素顔を撮りにくかったのかも」と分析していた。仮に著者がそう思っているとすれば、努力不足に加えて来日時の訪問地選択の失敗だろう。都市部と比べ、田舎にはこの本に登場する顔に負けない素敵な顔をした老人や素のままの子供がたくさんいるのだから。

大きさ13cm（横）×19cm（縦）×3.5cm（厚み）の小判の分厚い写真集。存在感のある本。
キャビネ大のポートレートがおよそ240枚がぎっしりと詰まっている。
レイアウトは左ページが空欄で下に撮影場所と年が小さく書かれている。
右のページは世界各国の老若男女の顔の写真がおかれている。

デザインは統一されている。

すべて縦長の写真なのでかなりトリミングされた写真もあり粒子が荒れている写真もちらちら見うけられる。
撮影地はアジアからアフリカまで広範囲にわたっているが、
特にいいのはアフガニスタン、パキスタン、インド、チベットの写真。
表紙にもなっているアフガニスタンの少女はあまりにも有名だが

それ以外のアフガニスタンの人々の写真にもいいがたくさんある。

STEVE McCURRYは、写真家集団マグナムに属している。
この写真集もマグナムのHP(www.magnumphotos.com）の彼のページに、すべての写真が紹介されている。

写真集のサイズが小さいことが残念だけれど、写真自体は本当にすばらしいものばかり。表紙のアフガン難民のポートレイトは知らない人がいないほど有名になった写真。強くひきつけられるものがあります。インド、パキスタン、アフガニスタン、マリなど世界中の人々を撮った写真は、おそらく私たちが訪れることはない国の人たち、また出会うことのないような人たちのポートレイトばかりだけれど、少しそのような人たちに思いをはせてみたくなります。一人一人の目が何かを語っていて、とてもパワフルで感情があふれ出るような写真ばかりです。