シリーズ第二弾
★★★★☆
安倍晴明、長南年恵、コナン・ドイル、宮武外骨が登場
神秘家とのくくりにされていますが、ジャーナリストの宮武外骨を取り上げている点が流石、水木氏
水木氏の作品にはしばしば風刺的な側面がみられる
相通ずるものが、あったのだろうか
安倍晴明は、しばしば美青年として描かれることも多い
しかし、水木氏の造形はそうでは無い
必要以上に美化しない、その姿勢は素晴らしい
現在に伝わる「いざなぎ流」に触れるなど、幅広い考察がなせれていた
長南年恵
彼女のことは全く知りませんでした
ある意味彼女が一番神秘家らしい
アメリカン・インディアン ホピ族
ニューブリテン島のバインニング族
等など
様々な民族の儀式との比較考察は特に興味深かった
ホームズの著者として有名なコナン・ドイル
彼は心霊主義者でもあった
後に捏造だと判明した妖精と少女が写った写真を信じていたドイル
心霊主義者ゆえに信じたいから信じてしまったという否定的エピソードも掲載されており、比較的公正な立場で描いているのが、非常に好印象だった
水木味の非凡人列伝
★★★★☆
本書はご存じ水木しげる氏の筆による神秘家の列伝である。とはいえ、安倍晴明、長南年恵、コナン・ドイル、宮武外骨という顔ぶれを見ると、神秘家というより非凡人伝というのが相応しいようにも思える。ともかく、水木氏は平安時代の伝説的な陰陽師から明治・大正・昭和期に活躍した反骨精神旺盛のジャーナリストまで、その妖怪を描いてきた筆で描くのである。
描き方も、今昔物語などでよく知られたエピソードを描きつつ、時に作中に水木氏本人のコメントが加えられ、様々なエピソードと解説が相まって独特の味わいを出している。
非凡人故に必ずしも家庭的に恵まれた人生をおくったわけではない人についても、水木氏は愛情溢れる筆で描き、通常であれば眉をひそめるような不倫などのエピソードについても、共に生きる者の親近感といったものが筆に見えるようで、読んでも不快にならないのは作者の徳であろう。
長南年恵という霊能力者と呼ばれた人──病治し、水の引き寄せ、見えぬ物を見、知り得ないはずのものを知ったらしい──と、宮武外骨については本書で初めて知ったことが多いのだが、前者には不思議さを、後者には親近感を感じた。荒唐無稽に思えるエピソードには、ひょっとしたらあるかも、という思いを、どう考えても社会不適応者だろう、と思えるエピソードにも、こういう生き方も有りか、と思わせるのが水木氏の持ち味なのであろう。