伝統と革新、調性と無調性、インとアウト。ちょっと難しい話になるが、前者はオーソドックスなジャズ、後者はオーネット・コールマン以降の前衛ジャズを説明するときによく使われる言葉である。
チャーリー・パーカーのコピーからスタートしたエリック・ドルフィーは、当初伝統的なスタイルのジャズマンだったが、最後はフリー・ジャズの入口にまでたどり着いた。しかも36歳の若さで病死したため、もし彼が長生きしていたらどんな音楽をやっていたのだろうと興味がつきない。
そのヒントを与えてくれるのが、1964年にブルーノートで録音した本作だ。ドルフィーにはめずらしいコンセプト・アルバムで、全曲オリジナルを演奏している。抽象画を見ているような気分になる独特の世界は、伝統と革新、調性と無調性、インとアウトが一体となっていて、聴く者を圧倒する。トニー・ウィリアムス、フレディ・ハバード、ボビー・ハッチャーソンら当時の新主流派の面々も、ドルフィーの意図を理解して緊張感みなぎるプレイを繰り広げる。(市川正二)
心身を揺さぶるスリリングで美しい音楽。代表作。
★★★★★
70年代に私は、プログレッシブ・ロックやジャズ・ロック、そしてフランク・ザッパ経由でこの作品を聴きました。
冒頭の1曲目を聴いた時、「これだよこれ!一番聴きたかったのは!」と心の中で叫びました。ザッパは、60年代にマザーズ・オブ・インヴェンションでこうした音楽に挑戦していますが、結局成功していません。
とにかく、この作品は、インパクトが強かった。何度も聴くたびに凄さを体験できるアルバムです。この作品の魅力と言ったら、強靭さとハイテンション、予測不可能なスリリングな展開、美しさと滅びゆくはかなさ、そして毎日訪れる黄昏のような脱力感・・・全く枚挙の暇もないくらい多面性をもった秀逸な作品です。
本作は、絶えず聴きなおされ、コメントされるべき古典的名作でしょう。エリック・ドルフィーこそ、ジャズ史だけでなく音楽史に残る名演奏家、名コンポーザーだと思うのですが。
轟音マエストロ
★★★★★
エリック・ドルフィーが1964年にリリースした前衛的代表作。抽象的なアプローチとフリー・フォームな演奏で生まれた斬新なエモーション。
音楽的ヴィジョンを表現する上での人選も最高のもの。音楽的にブレのないメンバーの集中力が全編漲っています。
主役のプレイに関するなら、フルートもアルトサックスも良質ですが、やはりドルフィーと言えばバスクラリネット。一曲目と二曲目の
演奏でその轟音を聴けますが、静寂を怪しく切り裂いたり気だるく突き破ったりする感覚が堪らない。
興味ある方は、熱心な信奉者たちの間で今も様々に評価されているこの名盤を自分なりに楽しんでみて下さい。
カリスマ的マルチ・リード奏者がアメリカに残した渾身のラスト・メッセージ
★★★★★
今なおカリスマ的評価を受けるドルフィーが他界する4ヶ月前に残した驚異のリーダー作。緻密に構築されたサウンドは現在も多くの音楽家に影響を与えている。謎めいたジャケット・デザインも秀逸。
B面こそが名演!!
★★★★★
バスクラも面白い……フルートも綺麗だ……だが彼の突き刺さって来るアルトこそがやはり最高だ!そういう意味ではこの盤はB面(CDでは4と5)こそが最高の演奏だ!フレディやボビハチも健闘しているしトニーの天才ぶりには脱帽モノだろう!!しかし やはりドルフィーの鬼気迫る演奏には脱皮モノだ!!個人的にはタイトル曲の途中ドルフィー→フレディにソロが替わる繋ぎの部分と終盤ドルフィー→トニー→フレディ→トニーとチェイスする部分が好きだ!!
透徹した空間
★★★★★
コールマンやアイラーの演奏とは一味違う
骨格のしっかりした構成美。
浮遊するような音空間、
原色にちかい強烈な色彩感覚で一音の無駄もない
音をメンバーそれぞれが
キャンパスに配置している。
しかもメンバーの奏でる音は終始
拮抗しておりその強烈な存在感は損なわれることは
一切ない。これはもう
完璧なモダン・アートと呼ぶほかはない!
リーダーのバスクラ、フルート、アルトサックスは
自在に行き来し、ボビー・ハッチャーソン
のバイブとトニー・ウイリアムスのドラムは
的確なアクセントを配置しシャープに刻み続ける
64年発表当時、「新主流派」と呼ばれた
この作品がどれだけ斬新だったか
計り知れないが今でもその輝きは決して失わない
アヴァンギャルドの金字塔!!