「深く読む技術」と「ベクトルを伸ばす」
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「読み込む技術、考える力・書く力を鍛え、問題解決力をつける」と商品の説明にはあるが、商品の説明やタイトルから受ける印象と本書を読んで受ける印象には大きな開きがあるように思う。
本書では著者は数本の文章から読み取れる内容に対していくつか疑問点をあげ、なぜそのように感じるのか、その原因はどこにあるのか、その考えたプロセスを事細かに分析し記述している。「このようにせよ」「こう考えるべし」といったマニュアル的な記述は一切ないから、考えるテクニックを伝授してもらえると期待して本書を読んだ場合、そのギャップに戸惑うかもしれない。
しかし、まずはなぜ自分がそのように戸惑ったのかその原因を明らかにしようと試みることで、本書の言う「ベクトルを伸ばす」ことの第一歩は果たせているのではないか。考える力や書く力は、小手先の技術では決してなく、今までに自分が感じてきたことすなわち自分の経験と感じたこととのギャップを解消しようとすることから生まれるのだろう。