本書では、適切に管理さえすれば、グローバル化は今日の世界に社会的利益をもたらす最強の武器となるという事実が解説される。バグワティは国際経済に関する圧倒的な知識を駆使しながら、反対派が得意げに示す例は実情と異なるものが多い理由を説明し、グローバル化が原因とされている問題の多くは、実はグローバル化により緩和できるのだと説く。たとえば、グローバル化により発展途上国にいっそうの普遍的な繁栄がもたらされれば、児童就労はまたたく間に減少し、識字率も上昇するという(十分な収入があれば、両親は子どもたちを仕事ではなく学校に送り出すようになる)。また、グローバル化が世界中の女性運動を促進する事実や、適切な環境保護策をとりさえすれば、経済成長は必ずしも環境汚染を加速させるものではないという証拠が示される。そして、グローバル化が「マックワールド」(いわゆるファストフード文化)による文化的侵略を助長しているという批判に対しては、サルマン・ラシュディを引き合いにして反論する。ラシュディは、ボンベイのスラングと完璧な英語の入り混じった文体で、南アメリカの魔術的リアリズムを取り入れた小説を書いている。グローバル化が生み出すのは、白パン的な純粋文化ではなく、スパイスのきいた混合文化なのである。バグワティは彼特有のウィットと学識を交えながら、グローバル化は解決策の一環であって、問題となるものではないと主張している。グローバル化論争の論点を理解したい方は、本書を読むことをおすすめする。
この本は国際経済学を勉強した人にとっては特に学術的に
新しいものではなく,想定している読者は
主にNGOや市民運動団体に興味ある人たちだと思われる。
なおクルーグマンの「良い経済学悪い経済学」とテーマは似ているが,
内容はこちらのほうが包括的で内容も深い。