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“いじめ学”の時代

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 柏書房
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あまりに具体的な類型化と提案の提示 ★★★★★
本書の主張に対して賛同できるかどうかはとりあえずさておき、本書において他の関連書籍と比べて優れていると思われるのは、本書6章以降に、いじめ発生のメカニズム・いじめの類型・いじめのない社会の提案が、あまりに具体的に述べられているところである。

また本書は入門書でもあるので「世界が開かれていない状態」「欠如」「全能希求行動」「主人公vs奴婢」モノなど著者独特の言い回しに対するさらなる理解は、読者の想像力に委ねられる、もしくは今後の「いじめ学」での勉強によって獲得されることになるが、何においても上に記したようなツリーが頭の中に明晰に描き出される点が本書の出色の部分である。そして未来の教育制度に関しても具体的なシミュレーションをしている。

総論から各論まで具体的に著者側からちゃんと提示されているおかげで、読者も容易に反論・疑問点の提示が出来る。例えば「警察・司法」を学校に介在させるとなると、法的にグレーゾーンである暴力系のいじめに対してはどう立件するのか、など。

また人間関係全般における本書のスタンスとして「良好な人間関係を保つためには相手との適切な距離を保つこと」を重要視しており、単なる学校におけるいじめ分析だけではなく人間社会の他人とのコミュニケーションを風通しよく読み解く鍵ともなっている。よって人間関係に悩むあらゆる層の人間に進められる本である。(本書の裏表紙にあるキャッチ・コピーには『「空気を読めよ」と言われる、君たちに捧げる。』とある。)
思想の軌跡をたどる書 ★★★★☆
この著書において、99%重要な位置を占めていると私が思うのは、第3章から第4章にかけての、著者の学校での実体験について書かれた部分である。何故ならば、学問において最も重要なのは結論ではなく、その人がそこに至るまでに歩んだ道のりであり、理不尽で残酷な悪に対面した時、その人がどう動いたかであるからだ。
この著書は、学者である以前に、学校という地獄を生き抜いた一人の人間、内藤朝雄としての、命と思想の軌跡であり、ペンではなく著者自身の血によって刻まれた希求の碑である。
学校制度の改革のために著者が奔走した人生を著した書物を、いつの日にか読んでみたいと強く願う。
単なるいじめ入門書 ★★☆☆☆
本書は、著者が自ら指摘するように、いじめに関する入門書です。なので、詳細
な考察はされておらず、著者のいじめ研究についての概要が述べられているもの
です。その点で、いじめ問題に関して全くの素人でない方には、本書はお薦めで
きません。もし著者の考え方に興味があるのであれば、『いじめの社会理論』を
読むべきでしょう。

本書は、入門書だけあって、ざっくりした論述のみです。なので、直感的に共感
できる方はよいですが、そうでない方にとっては、一方的で偏面的な議論によう
に思えてしまうかもしれません。

例えば、著者は、学校におけるいじめの根本的な原因の一つに、それまでは全く
の他人であった数十人もの子どもが強制的に一つのクラスに押し込められ生活す
ることを強いられる点を上げ、従って、クラスという枠組みを撤廃せよと提案し
ています。しかし、私の個人的感想としては、そのような主張をするのであれ
ば、なぜクラス(学級)という枠組みが存在するのかという点について、教育論
にも目を配ってほしかったのですが、全く考慮されていません。
実効性の部分は少し気になるが ★★★★☆
本書の構成は、1〜2章で、いじめ報道などで聞く俗論の問題点、間違いを指摘し、3〜5章で、著者が「いじめ」研究を始めるに至る経緯について、6章〜9章でメカニズムを解明し、10〜12章で対策を考慮する、という形になっている。
06年からのいじめ報道。よく言われたのが、「昔は〜」「ジャイアンのような存在がいたから…」「人間関係が希薄だから…」という言葉の数々。しかし、それらをよく読むと矛盾は多いし、また、単に思っただけ、というものも多い。そして、その当事者に対する聞き込みなどからわかるものは、その俗論を否定するものも多い。
凶悪な事例が起こるところまでエスカレートしたにも関わらず、「楽しいから」という一言で終わってしまう子供たち。そこにあるのは、人間関係の希薄化ではなく、ノリと、その場の同調圧力による強制。つまり、きつい締め付けがある世界だからこそ、その世界の価値観で決まってしまう。そして、よりエスカレートしていく。田舎での人間関係であるとかも含めて、そういう部分の経験もあるだけに、より、そのことをわかりやすく、納得することができた。
ただ、対策に関してはちょっと疑問も感じる。短期的解決である「警察を介入させよ」という辺りに関して言えば、賛成なのだが、そこよりも先はちょっと実効性がどうか、と思う。例えば、教室という単位をなくせ、というのは、締め付けを緩やかに、という意味ではわかるのだが、学校の運営などに支障を来すことはないのだろうか。また、ある程度の生徒数がいなければ、あまり効果があると思えない。最後の「教育チケット」制なども同様。少なくとも、ある程度の規模であるとか、開かれた社会そのものを前提にしており、実効性に疑問を感じてしまう。
とは言え、いじめに関するメカニズムであるとかを考えるためには、非常にわかりやすく参考になる書ではないかと思う。
即刻財政的可能性の吟味に入るべき ★★★★★
「いじめ」について積極的に論考を発表してきた著者による最新の診断と提言です。
著者の中間集団へ着目した分析と、「こころ」に言及するのではなく「いじめ」が
発生しにくい社会環境を制度的に準備せよという提言には、満腔からの賛意を表明
したいと思います。
この分析と提言は、一読の価値どころじゃないです。
また、著者も明確に自覚しているように、著者の分析と提言は、学校における「いじめ」
だけではなく、職場、団体、近隣といった万人にとってのハラスメント的な人間関係上の
問題に有効である点は、どこまでも強調されるべきところかと。

著者の個人史が参照されますが、通常ありがちな嫌味や自意識過剰は驚くほど少なく、
主張されるべき立論に確かに有効な個人史への言及であって、この点でも非常に説得力
のある一冊となっています。

そして、最後に提示される著者のビジョンは、上述のような「いじめ」に代表される
人間関係上の問題に有効といったものにとどまらず、今後懸念される日本社会の少子
高齢化・社会福祉財源の枯渇といった大問題にも一定以上の解決をもたらし得る優れ
た社会政策上の提言になっています。
この著者の提示するビジョンは、個別の論点の印象批評的な吟味に留めるべきでは決
してなく、財務省をはじめとした税務や経済の専門家による将来的な制度化を見据え
た財政的可能性の吟味を即刻開始すべきであり、法務の専門家による新たな立法を視
野に入れた現行法との齟齬の有無を即刻吟味すべきものであると考えます。

星五つじゃ足りねぇよ、が率直なところです。