なにかが足りない
★★★☆☆
日本の音楽界ではこういうバンドが評価されるべきとの賞賛がよく見られますが、僕はプロのミュージシャンとして何かが決定的に物足りないと感じました。好きな曲は何曲かありました。でも、メロディ運びやアルペジオ、構成、言葉選びなど、どの曲も似すぎてます。いい意味の統一感とかではなくて、幅が狭いように思いました。男女ツインボーカルというのもよく分からないです。女性のほうは、目立つコーラスくらいのポジションくらいにしか感じません(まあ、本人たちが「ツインボーカルバンドです」と謳ってるわけではないか)。ふつうに男性だけがボーカルをして、女性はコーラスをすればいいのではないでしょうか。少しだけ「ボーカル」のように中途半端に目立たせる「意味」が分かりません。あと、スキルは確かに相当なものだと思います。でも、ボーカル2人の高音と演奏の轟音で高圧的にごまかしてるだけで、音楽としての「メロディ」は正直たいしたことはないと思います。結局、テク重視バンドなのかな。長編メジャーデビューシングルのShort Ver.が収録されてますが、Short Ver.を出すなら長編は不要と思います。Long Ver.で出したなら、あとからShort Ver.を出すべきではないです。あまりメジャーにならないのには、それなりの理由があると思います。フロント2人ともいい声をしてるので、自分たちの「核」みたいなものを持てば、すごくいいものを届けてくれそうな気がします。
町田町蔵を
★★★★★
INU
というバンドをご存知でしょうか?
売れっ子作家町田康ですが。
時雨に引っかかってるなら、町田町蔵、町田康、を。
アルペジオ、変調、言葉、これでもかです。
昨今のクサレJポップに辟易なヒト。聴け。いいから聴いってって
これは呪術?
★★★★★
「JPOP Xfile」と「Telecastic fake show」とは、対をなしているような印象を受けた。
僕の指が透けていく 少し君に近づいた
(略)
イツカ僕は思い描いたの 感情線を君の全てに
僕の指は透けていく ここにあるよ
JPOP(「JPOP Xfile」より)
TKのソロから、「JPOP」と345が割り込む。
二人の歌声が螺旋を描く。
〈透〉明なイメージには、たびたび、染色が施されていく。
感情性の指に Mirror Letter を刺した
ユメノサカサマニ
(略)
感情性の指を刺した(「Telecastic fake show」より)
「感情線」と「感情性」との間の近縁性。
「感情」と近縁関係にあるであろう、指。
TKのソロから、「ユメノサカサマニ」を合図に、345が割り込んでくる。
二人の歌声が螺旋を描く。
「Telecastic fake show」における「赤い誘惑」は、「moment A rhythm」、「mib126」では「遠いオレンジ(の集合体)」に変奏される。
例えば12センチの瞬間を君に何回描いたら 遠いオレンジの集合体さえも
触れられるように(「moment A rhythm」より)
ちょっとしたスピードで僕は遠いオレンジに連れて行かれた(「mib126」より)
「Telecastic fake show」のインパクトが強すぎて、他の曲の印象が薄まってしまった観がある。その中にあって、冒頭の「ハカイヨノユメ」における、345の歌声は、どこか〈和〉を感じさせるようなところがあり、どこかに引きずり込まれるような感覚を覚える。歌声が、空間を歪め、異世界を立ち上げる呼び声となっているかのような……これは、一種の呪術かもしれない。
今、一番上り調子のバンドじゃないかな
★★★★★
自分はどちらかというとヘビーメタラーです(笑)
初めてユーチューブで聞いたときは、男女のボーカルの甲高い声がなじまなかった。
今は遠征してまでライブに行くぐらい好きです。
喜怒哀楽で言ったら、怒哀という感じ。
ヘビーかアグレッシブかと言ったら、アグレッシブ。
攻撃的か保守的と言ったら、攻撃的。
明るいか暗いかと言ったら、暗い。
演奏は間違いなく上手い。ドラムがテクニカル。ギターの音使い(特に空間系)が上手い。ベースがスライドを多用しムーディーでグルービー。
スローで静かな曲もあるのですが、静かの中に攻撃性を感じられる曲が多いです。
男性ボーカルは吐息のような歌い方や絶叫したりもします。
女性ボーカルの声に吸い込まれそうになります。
素晴らしい。今、一押しです。
I can hear you.Sigure!
★★★★★
歌詞カードを見てみると狂気性の裏にもメッセージ性があり、見る度にTKこと北嶋徹氏の才能に感服する。
特に今作はメジャーデビューという大きな経験をどういうスタンスで書き出すのかが楽しみだった。
一見支離滅裂なことを歌ってるように聴こえるが、これからの自分達の方向性の危惧、狂気への皮肉や、自由をひたすら求める者の滑稽さ。
そして今の音楽シーンへの決意表明と挑戦状。
JPOP Xfileの最後に 「Can you hear me? JPOP!」とはっきりと歌いきる345からそれは感じれる。
これからシーンで活躍していく上で自分達のスタンスをデビューアルバムではっきりと作り上げたバンドは凛として時雨ぐらいしかいないだろう。素晴らしい出来だ。