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The Breaking Of Nations: Order And Chaos In The Twenty-first Century

価格: ¥1,079
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Grove Pr
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国家の揺らぎ ★★★★☆
 本書の議論の枠組が田中明彦の『新しい「中世」』の議論と似ていると思って読み直してみたら、冷戦後の世界を三つに分けて考えるのは、本書の著者でイギリスの外交官でもあるCooperの方が先に示していたと書かれている。
 三つの世界とは、「プレ近代」、「近代」、「ポスト近代」と分類される世界のことで、著者はそれぞれの世界が異なる課題を投げかけているとしつつ、やや理想論的な観点から、運命を共有する国際社会が外交努力を通じて平和と繁栄を構築し、個人の自由の拡大の役割を担っていくことへの希望を示す。なお、「プレ近代」地域は、国家が独占的かつ正当に武力を行使することが出来ない脆弱な国家群を指す。大量破壊兵器やテロ活動と相俟って、これらの地域が国際秩序への脅威となっていることが指摘される。「近代」地域は、国家主権、内政不干渉、勢力均衡等の原則に基づくシステムによって特徴付けられる。「ポスト近代」地域では、上記の近代的な原則が緩和され、国際主義的な観点から国家間の監視や干渉も行われ、政府、民間部門、国際機関等の政治的・道徳的な関係が入り組んだ形で秩序が形成される。国家が中心を占める「近代」地域を挟んで、異なる原理で動く地域が描かれているのが印象的だ。
 本書では議論をわかり易くするために、ある程度図式的な説明がされているが、全体的には過度に理論的にならずに、歴史的視点が重視されている。また、外交をめぐる以下のような経験則が書かれている点が興味深い。1)外国民をきちんと理解することは重要、2)外交政策は国内政治に大きく左右される、3)外国政府の行動に影響を及ぼすことは難しい、4)外交政策は利害のみではなくアイデンティティ等の次元にも関わる、5)文脈(視野)を広げることが必要。特に、3)において、外国政府への説得手段(言葉、金、武力)の中で、金や武力の限界が指摘されている点は示唆に富むと思う。