浜尾四郎の推理小説集。長編『殺人鬼』と以下の短編９編を一冊にまとめました。
　新仮名新字、目次つきです。

「悪魔の弟子」「彼が殺したか」「彼は誰を殺したか」「正義」「死者の権利」「黄昏の告白」「殺された天一坊」「途上の犯人」「夢の殺人」

　検事や弁護士などの職につき、昭和８年には貴族院議員になった浜尾四郎は、戦前の日本では珍しく、長編としては徹頭徹尾「本格探偵小説」にこだわった作家です。ヴァン・ダインに影響を受け、法律知識を活かしたその作品は極めてクォリティの高いものです。
　江戸川乱歩も、自らとは異った作風であるものの、浜尾の取り組みを非常に評価していました。『黒死館殺人事件』の紹介文でも触れたように、乱歩の監修したハヤカワ・ミステリに３人だけ名を連ねる日本人作家には、小栗虫太郎・夢野久作と並んで浜尾四郎が入っています。