中攻とは、陸上攻撃機(九六陸攻、一式陸攻など)のことで、この陸攻機は、敵地や敵艦の爆撃あるいは雷撃の主力として使用されました。これは極めて危険な飛行機で、主翼内タンクに防弾装備なしでガソリンが詰め込まれており、敵機の銃弾一発で火を吹くことから、米軍パイロットからは、「ワンショットライター」と呼ばれていました。本書の題名通り「決死の爆撃行」となり、搭乗員たちも毎回出撃の際には、死ぬ覚悟で敵地へ乗り込んでいきました。
序章の回想文、「飛べ九六陸攻」を読むだけで、陸攻機が戦闘機に発見された場合の悲惨な状況が手に取るようにわかります。たった5ページ弱に収められた短い文章ですが、いかに敵機から逃れるのが難しいことであり、過酷な戦闘であるのか、わかります。当時の搭乗員たちのなんと勇敢なことか・・・。彼らは我々の思考の及ばない境遇の中で生き、そして散っていったのです。胸を締め付けられます。
さて、本書は横山氏の学生時代から、予科練、飛練での厳しい訓練の日々、部隊配属、グラマンとの交戦などの体験が詳細に書かれています。中攻隊はどのような部隊だったのか、中攻の操縦、性能、魚雷発射法などにも触れていますので、勉強になりました。
しかし終戦まで旧式の九六陸攻が現役で使用されていたとは・・・驚くというより、気の毒でなりません。こうした旧式機を前線で使用している段階で既に戦争の勝敗は見えていたといえるでしょう。