ベンチャーキャピタル業界の重鎮で、インテルを育てたアーサー・ロックや、アップル、シスコ、ヤフーを育てたセコイア・キャピタルのドン・バレンタイン、知名度ナンバーワンのVC会社であるクライナー・パーキンズの創業者、ユージーン・クライナーなど有名人も登場するが、日本ではほとんど知られていないVCも採り上げられている。
本書の特徴は、ベンチャー投資の業界人の生の声が紹介されている点だ。その肉声を読み進めると、年代により、地域により、また取り扱っている領域により、VCの世界がじつに多様であることがわかる。黒人などマイノリティーに立脚するマイノリティー・ファンド業界もある。資金源をみても、近年は独立系だけではなく、企業系VCや年金基金、財団、大学の基金など多様化している。アメリカのVC業界が時を経て、奥行きを加えたことをうかがわせる変化である。
そうした多様性の半面、昔は百貨店に似て何でもやるVCが多かったのが、その後競争の過程で専門特化するようになってきたり、皆一様に面倒見がよく、時間と労力を惜しまずに経営に関与しているなど興味深い共通点もある。
ここに登場する35人は皆、じつに勤勉だ。ベンチャー投資を担う人たちが「金!」「金!」と言っていないことも特筆に値する。「VCは金融取引をする会社ではない。ビジネスを創る仕事をしているのだ」という発言を、VCが少なからず共有している。アメリカのベンチャー投資や起業について、目を開かせられる思いがする本である。
35人の生の声には、健全な野心を感じる。これこそが、今の日本に一番必要なものではないだろうか。(榊原清則)
本書を通じて私が特に興味を感じるのは以下の点です。
1.ファイナンス畑のキャピタリストは少ない。多くはビジネスオペレーション等の経験を有する。
2.ファイナンサーであるが、それ以上に起業家の懸かりつけ心理医師でありコーチである(ように思われる)ケースが多い。
3.投資エリアは自分が良く知る業界(もしくはマイノリティ)に限っているケースが多い。
4.おそらく上記2によって、多忙さ自体と、多忙さからくる過ちを未然に防いでいる。グレシャムの法則に対して中立であろうとする。
5.仕事に対してエンスーである。
6.確かに、多くはMBAホルダーである。
以上の特質を考えると、ベンチャー・キャピタリスト(≒ファイナンサー)であることも大事ながら、起業家にとってのビジネスの指南役としてのメンター・キャピタリスト(≒精神的、技術的、対外的な指南役)であろうとするスタンスが、今、キャピタリストに求められるものなのかも知れません。
答えが知りたい方は是非、この書を一読下さい。様々な職についていた
方々がキャピタリストとなり、有数のベンチャー企業を育てた軌跡が語
られています。
金融関係に携わる方々は無論、サラリーマンではなく、ビジネスマンを
自負される方々にこの一冊を強くお薦めします♪