今回もじっくり聴けました
★★★★☆
時の覇者のレビューにも書きましたが、 ソロ・アコースティックの少し前にジャクソンの詩に深く感動し、真剣に聴くようになった新米ジャクソンファンです。よく解説にも書いてあるように彼の魅力は自分や友、そして普通の人々が抱えている葛藤、苦悩、矛盾を繊細に表現してくれる所にあり、ソロでも友に語りかけるように歌う様子が心打たれました。今回も同様に感じるものがありました。スペインの人々の目線に合わせてやっていることなので理解に難しい所もありますが、その土地の人々に対する謙虚さ、友に語りかける姿勢は変わらないものだと思います。リンドレーに関して言えば最近彼があちこちでやっている演奏旅行をみれば昔のようにやることは期待しないほうがよいでしょう。ディスク2が特に良く、単にヒットを並べたのではなく、その土地の人々に今問いかけたい、もしくは共感してもらえる選曲なのだと思います。人間として、そして表現者としての磨きがかかった演奏がここにはあります。もしかしたら昔ながらのファンはそんなことは求めていないかもしれませんが。
好い歳の取り方
★★★★☆
まさにジャケットが本作の概要を端的に表している。ジャクソンとデイヴィッドとの連名は彼らにとっても初めて。しかしやジャクソンの姿が大きいのは採用曲数や全体印象がジャクソンのイメージにデイヴィッドが見事に溶け込んでいる様子を表している。原題にスペイン語表記があるように、本作はメキシコで、地元ミュージシャンの客演も交え、そこかしこにエスニックな情緒を醸し出している。本作はそんなアルバム。
私自身も80年代からジャクソンのファンであるし、デイヴィッドとの共演に名作「レイト・フォー・ザ・スカイ」や「孤独なランナー」の再演を期待したい気持ちは十分ある。が、いわゆる回顧的なアルバムではない。後半の彼の青年の苦悩は多く歌った楽曲の中にさえ、メキシコという場が与えたポジティブさやカラっとした明るさが加えられていて、原曲のニュアンスを巧みに改変している。その変化を好意的に受け入れられるかどうか、で本作の評価が分かれるということだろう。
私自身は、デイヴィッドの本来の持ち味とは、まさに多国籍/エスペラント/ストレンジな所にある(ジャクソンとの過去の仕事は彼の抒情的な面がクローズアップされたもの)と思っているので、ここで聴かれる2人の演奏のミックスこそが最も彼ららしいジョイントだと取れるではないだろうか。
私自身は、ジャクソンの詩と曲は勿論、そのアーティストとしての信念や精神性も含めて大好きなので、本作については、好意的に評価している。この年齢になって初めて、世の中の流行やセールスなどに目もくれず、大親友(デイヴィッド)の音楽性をも全て飲み込んで、自身のゆるぎない歌を聴かせきろうとしているジャクソンの、自然体だが何物にも動じないピュアな感性に感動している。「好い歳の取り方」とはこういう人の事を言うのだろうと思う。
個人的には、故ローウェル・ジョージによるスライド・ギターの名演が胸を熱くさせる名曲DISC2TRK3をデイヴィッドが演ずる部分でも見事に涙腺が緩んだし、名曲中の名曲DISC2TRK6の流石の雰囲気は見事の一言。
1点減点は、ステージトークをほぼ生で収録している部分が、スペイン語を理解できない我々には対訳無では退屈である点。これも、チャプターが分かれているので、スキップすれば大きな問題ではないと思う。
ジャクソンの曲は夜に聴きたくなるものだが、本作は昼下がりにでも聴けそうな、そんな気がする。
昔の彼らではありません。
★★★☆☆
冷静だけれども、時にびっくりするくらいはじけるジャクソン・ブラウン、そして、好対照的にいつもはじけているが、時に驚くほどに厭世者としての顔を見せる「化けもの」リンドレイ。昔々はこの2人の組み合わせが実に良く、何とも言えないノリを聴かせてくれたものである。名盤を多く残してくれたものである。
リユニオンブームで今回、このライヴCDでもまたあの嬉しいノリを聴かせてくれるものと思っていた。
が、ハズレでした。スパニッシュというか中南米風味を利かせた曲を交えていつもの彼らのリラックスしたあるいは鋭利な音楽を聴かせてくれるなんてものでは全然ありませんでした。難しそうな民族楽器を難しそうに使い、凝りに凝った玄人受けしそうなアレンジの曲をCD2枚組みでえんえんやっているのである。何とも肩が凝って仕方がない(タイトルトラックであるアンコール辺りの曲はいい感じだけど)。
ま、そりゃそうかもしれない。ご主人のブラウンは、80年代から迷走、最近はソロアコースティック、そして若い姉ちゃんを連れてのツアーを行っていると言う活動。陽気な「化けもの」リンドレイは、今や立場を完全に失ってしまい、隠遁者として生活しているありさま。時は確実に過ぎ去っていたのですね。
もう、あの頃にはもどれないのでしょうか。ちょっと悲しい気持ちになりました。
これって、もしかして貧乏しているリンドレイを救うためのライヴ?それで、本番じゃなくて、限定版なのか?そんな勘ぐりもしてしまいました。う〜ん。
う〜ん、意図がわからん・・・!
★★★☆☆
「時の征者」の日本盤ボートラに収められていた盟友D・リンドレーとのアコースティックライブの出来が素晴らしく(今改めて聴いても「時の征者」本編より素晴らしい、残念ながら…)、今か今かと指折り数えていた作品なんだが、結論から言うと今ひとつと言いますか、ジャクソンの意図がよくわからないアルバムとなってしまったね。
彼はよくアルバムの中にスパニッシュ風味の曲を入れることがある。ラテン系が好きというよりは、社会派の彼らしく、中南米諸国との関わりから、彼の地のミュージシャンとの親交の賜物という感じで。まぁ生真面目な彼らしく、影響を受けやすいのか(笑)、けどそんな曲達も個人的には結構好きだったりしてたんだよね。
けどね、ここまであからさまにスパニッシュされちゃうとちょっと興醒めかなぁ。アルバムの中に1〜2曲だからこそ映えるんであって、とにかくゲストが鬱陶しいことこの上ない。まぁ新たなチャレンジのつもりなのか、アコースティックライブとの差別化を図ったのかも知れないけど、今さらリンドレーと組んでまでやることかは疑問だよねぇ。しかもこれ、2006年の録音。そう、前作「時の征者」より2年も前の音源なんだよね。今これをリリースする意図がどうにもわからん!
作品としては決して悪くはないが、2枚組にするには冗長。ゲストが入るトラックを全てカットして1枚にしてくれたらどんなに素晴らしかっただろうと思うとホントにもったいない!
素晴らしい演奏・アレンジはある。しかし、2枚組はちょっと長すぎ?
★★★★☆
デヴィッド・リンドレーとジャクソンのデュオかと思っていたが、基本はパーカッションのティノ・ディ・ジェラートが加わったトリオで、曲によってスペイン人のゲストが加わる。ジャクソンはMCもスペイン語で頑張り、デヴィッドはアコギやフィドルだけでなく、ギリシャ、アラブそしてハワイの楽器も駆使。ジャクソンのアンプラグド・バンド・ライヴという趣だ。
ジャクソン70、80年代の名曲が斬新なアレンジで聴けるのは嬉しい。しかし、結局本作で私が心惹かれるのはジャクソンの曲のメロディーと声の力、デヴィッドとジャクソンの楽器演奏。
私にはティノのパーカッションはリズム・ボックスのように聞こえる。完全な2人だけのデュオの方が良かったのでは? 「トランキーロ」はスペイン版テイク・イット・イージーだが歌詞が似てるだけ。
ジャクソンの冒険は理解できるし、個々の演奏は気に入ったものが多いが、ディスク2枚を通して聴くと単調さを感じる。1枚に凝縮した方が良かっただろう。例えばラストの曲を約9分に伸ばす必要があったのか、疑問だ。