魅力的な政治家たち
★★★★★
佐藤賢一のフランス革命シリーズの第3弾。
いよいよタレイランの登場。バスティーユ陥落から約1年間が舞台となっている。
もちろん、小説だから史実と異なるところもあろうが、タレイラン、ミラボー、ロベスピエールがフランス革命という嵐の中で、それぞれの革命の行く末を思いながら、活動していく様を生き生きと描いている。
なんと魅力的な政治家たちか。
200年前の議会の方が、よっぽど議論をしているなぁ。どこかの議員に読ませたい。
次巻は半年後の9月ということだけど、それまで待てない。
いよっ 待っていました!!
★★★★☆
フランス史を縦横無尽に書きつくす作家・佐藤氏が、いずれは書くだろうと期待して待っていたそのものずばりのフランス革命。
1・2巻もさることながら、ここからが目が離せません。
ベルばら世代の私にはたまらない。
序盤の主人公がミラボーというのも佐藤氏らしいチョイスでは。
私はパリの民衆(おかみさん)同様、ついついラ・ファイエットに目が行ってしまうが。そうか彼は軽薄なのかもね。
佐藤氏は男のコンプレックスを巧みに描き、そこにこそ男の色気というか、魅力を見出し、描き切るのを得意としていると、日頃感じております。
そして・・・待っていました。タレイラン!!!
革命をすり抜け、ナポレオン時代を生き抜きウィーン会議で優雅に舞った大貴族。彼こそが、フランス革命のキーパーソンです。
これからが大いに楽しみ。塩野氏のローマ史と同様、じっくりついてまいります。
勉強になります‥。
★★★☆☆
1789年の暮から翌年の革命一周年までを描く、第3巻。
ロベスピエールが左派の領袖として力を持ち始め、タレイランが
教会改革を画策する。
そして、相変らずミラボーは睨みをきかせている。
半年で一年分、時間の流れを少し早回ししていく感じで刊行されて
いるこのシリーズだが、正直言って少し辟易しつつもある。
あまりの逆接の文章の多さがそのひとつ。
多い時には見開き一つに「が、‥」が3回も出てくる。
言い回しも同じものが多い。
例えば「はん、むしろ神など気分が悪い」の「はん」、そして
「ええ、ええ、‥」というあいづち、「なんとなれば」という接続詞。
「なんとなれば」は10回以上、「ええ‥」は「ああ、」「おお、」
「いえいえ」なども含めるとかなりになる。
因みに「はん」は20回以上出てくる。
著者の語り口は、今まで気になったことはないのだが、こんなところが
目に付くのは、3巻目だから‥?
現代日本の政治に通じる国民議会の論争
★★★★★
私がこの3巻で最も興味を引かれたのは、憲法制定国民議会での左派と右派の激しい論争と駆け引きの描写だ。その中心には怪物ミラーボーがおり、更にはやがてナポレオン時代に大活躍することになるタレーランも登場して暗躍、そして勿論ロベスピエールもダントンもいる。
このときの議論で面白いのは、戦争についての宣戦講和の機能を担うのは、立法権(国民議会)か執行権(国王政府)かという議論。左派は国家主権は国民にあるのだから、戦争を始める権利も止める決断も議会が担うべきだと主張し、右派は、戦争は危急存亡の事態への対応なのだから、悠長な議会の論議を待って決断を下していたのでは、いざと言う時には間に合わない。宣戦講和の機能は国王政府に委ねられるべきだと主張する。おまけにその議論の背景には、他国の領土への侵略戦争は悪であり、フランス国民も国王政府もそんな戦争をやる意志は無いという建前がある。問題なのは他国から不当な戦争を仕掛けられたときの自衛戦争のことだ言う。
これって、国民議会を国会に、国王政府を日本政府に読み替えれば、そっくりそのまま自衛隊の海外派遣を巡って繰り返されている現代日本の防衛論争そのものではないか!作者は勿論そのことを意識して書いているのだろう。論考の基底にしっかりとした歴史学、政治史の学識を置きながら、登場人物にタップリと強烈な個性を付加し、ダイナミックな現代版講談口調で面白ろ可笑しく話を進めていくこの作者の力量にはまったく感嘆する。
それにつけても、宣戦講和の権利に関する論争の結論に「フランス国民は征服を目的とする戦争を放棄する。他の国民の自由を害するために向後一切の武力を用いることは無い。」と付け加えることで、左派は王党派ミラボーの提案の受け入れに満足したという作者の言及によって、それがやがてナポレオンを生む国の話だと知っている我々読者は、冷酷な歴史の皮肉を改めて味わうことになるのが、本書を読む醍醐味の一つだ。
最強の政治家タレイラン登場!!!!
★★★★★
フランスを舞台にした時代小説を手がけてきた著者による
大河プロジェクト「小説フランス革命」
その最新刊である本書は
タレイランの登場から
彼も中心的にかかわった<全国連盟祭>までが描かれます。
理想や信仰とは無縁に、ただ自らの欲望を満たそうとするタレイラン。
そんな彼に、フランスの未来を想い清濁併せ呑むミラボー、
自らの信念を純粋に追い続けるロベスピエールなどが加わり
革命の歯車はさらに加速する。
議会での白熱する議論もさることながら
教会改革に挑むタレイランと
頑迷にそれを拒む司教との噛み合わないやり取りなど
政治・歴史小説としての面白さは十分。
さらに、議員として一線で活躍するタレイランと
彼に対して羨望や友情、そして屈辱が入り混じった想いを抱くデムーランのシーンなどは
現代の青春小説のようなほろ苦さを味わえます。
それ以外にも様々な楽しみ方ができる本作。
フランス革命の流れがわかっている方であれば
お好みの場面から読み始めてもよいのではないでしょうか☆
なお今後に関しては、
ミラボーの死やフーシェをどのように描くのか?
が一番の関心事です☆☆