泣くために読む重松作品 (私にとって)
★★★★★
重松清さんの小説は、「身近な人の死」が背景になっている作品が多いですよね。
間違いなく心に染みて泣かされるとわかっていて(期待して)、重松本に手が伸びます。
「ステップ」では、時の経過と共に、状況や登場人物の心境が熟成して行く様子が良かったです。
「人生って捨てたものではない」というのが重松清さんの変わらぬメッセージですね。感謝しています。
一気に読みました。
★★★★★
始まりは、父親が2歳の娘を保育園へ連れていくところでした。
なぜ父親なのかと思ったら、一年前、妻が1歳半の娘を残して
逝ってしまったからでした。
父子家庭となり、妻の義父・義母は孫がいないためとても大切に
してくれているのですが、ありがたくもあり、完全には喜べない
事情もあります。そんな中、迷いながら子育てをしていく様子が
描かれています。子供が成長していく中で、問題にぶつかり
考え、周囲の力を借りながら自分自身も成長していくところが
良かったです。大事な場面で家族の言葉が身にしみます。
特に義父の言葉が胸に響きました。
私にも子供がいます。
子育てはやはり、妻の方が一緒にいる時間が長いので、
頼ってしまうことが多いです。
子供もママが大好きです。
ママがいなくなるということは想像ができないです。
本当に、いてくれることだけでありがたいことです。
色々な方に支えられて、今こうして生きていること自体が
ありがたいし、幸せだと感じられました。
ホロリとさせられました。
表紙と裏表紙の間に流れる、親子の苦悩と成長の物語
★★★☆☆
奥さんを亡くした父親が主人公という状況は「とんび」と同じですが、昭和の親父を描いた重厚な「とんび」に対して、こちらは東京のニュータウンが舞台。物語のテイストはかなり違います。
一人娘・美紀の保育園から小学校卒業までを描いた連作短編スタイル。雑誌連載時の原題が「恋まで、あと三歩。」とあるように、各章にゲストの女性キャラが現れ、再婚相手としてどうかと健一が逡巡。この点が物語を軽くしています。
表紙に描かれる健一・美紀親子と、裏表紙見返しの同じふたり。裏表紙の彼女を見ていると、六年間って一生懸命生きると短いけど、短い六年間の間にひとは大きく成長するんだな〜、と感じます。
「残されたもの」たちの優しくも確かな足取りの物語
★★★★★
娘をもつ同じ年代の父親にいつのまにか感情移入し、共感し…
周りの人々の優しさ、娘の成長に何度も涙しました。
他の重松作品同様「心のやわらかいところ」に染みてきます。
妻に先立たれた夫と幼い娘の日々。心洗われる連作小説に一大拍手を
★★★★★
■武田健一は長女・美紀と二人暮らし。都内に住むサラリーマンだ。美紀が1歳半のとき、妻が急死した。結婚3年目だった。再婚を勧められることもあるが、まだそんな気にはなれない。横浜にいる義父母(亡き妻の両親)は何かと美紀のために骨折ってくれる。本書はそんな父と娘の10年間の物語を描いている。
■2歳の保育所時代、5歳のひな祭り、小3のクリスマスといった具合に、その年の特別な情景を切り取った章立てで構成し、美紀の成長と健一の心情をていねいに見つめる。ときに美紀は、母親不在の現実に直面し、悲しみにくれる。健一はその悩みを軽減するために共に悩み、努力する。
■例えば小学1年の母の日のエピソード。参観日に母親の絵を張り出すことになっているが、事前相談に来た担任の若い女性教師は「この種のケースは初めてなので」などと無神経な物言いをする。また、自己紹介で美紀が「ママはずっとおうちにいます」と述べた言葉をとらえ「嘘をついた」と決め付ける。それは「家の写真の中に母はいつもいる」という意味なのに……。参観日用に美紀は、天使の輪を頭に置いた母の絵を描き提出。彼女は前日のクラス会で「ママは死んじゃったけどずっとうちにいるんだよ」と堂々と宣言するのだ。ブラボー!
■物語は父親の再婚と美紀の小学校卒業式で優しく終わる。人の世のはかなさも描き、心洗われ随所で泣けた。