グラス
★★★☆☆
雰囲気は「幽霊たち」に似ているが、まだこの小説家の初期の作品だけあってバランスが悪く、クドい部分も多い。
「幽霊たち」ほど洗練されてない。
この小説を本にする際、かなりの出版社に断られたらしいが、分かる気もする。
ポール・オースターじゃないとこの小説は最後まで読まない。
その点では貴重だ。
すごく孤独だけれど、でも安らぎがあった。
★★★★☆
人、街角、足元、壁、空…それら各々に名前はあるのか?
目にするすべてのものそれ自体に意味やつながりがあるのか?
ただ在るというすべての成り立ちの中で
自分は他とどれほどの違いがあるというのか?
一方を選ぶ…その名で呼ぶ…他と識別する…
その時に選ばれなかった方は消えてどこへいくのか?
読みながら、
次第に存在の影が薄くなっていく
この男に流れる時間にしばし漂ってみよう。
読み終えて僕が行き着いた先にあったのは、
透明、周囲との同化…そして拡散、
それはすごく孤独だけれど、でも安らぎがあった。
寓話的な物語
★★★★☆
ポールオースターの小説処女作の、柴田元幸による再翻訳版。
雑誌『Coyote』に掲載された翻訳の単行本化です。
舞台はニューヨーク。「そもそものはじまりは間違い電話だっ
た。」というフレーズから始まり、物語は淡々と進みます。著
者のニューヨーク3部作(他に『幽霊たち』、『鍵のかかった
部屋』があり)の最初の作品らしく、急激な話の展開はないけ
ど、透明で寓話的な世界感が心地良いです。
自分の存在の危うさ、不確かさを意識してちょっと怖くなるけど、
読み応えのある物語です。
不安を煽る小説
★★★★☆
これが一番最初に出たとき私はまだ中学生くらいで、普通に推理小説等が好きで、別題別訳で出版されたのは知ってましたが、何故か読まず今回初めて読みました。難しいことはよく判りませんが、短い話ながら非常に不安を憶える不条理さに圧倒されました。アートは人を不安にするべきだ、という説がありますが、それを地で行っていると思います。3部作の1冊ということであとの2冊も読みたくなります。因みにオースターがこれ以前にPaul Benjamin名義で書いたという「Squeeze Play」という小説は翻訳されないのでしょうか。普通のハードボイルドらしいけど、こういう不条理な物を書く人が全うな推理小説を書くとどうなるか?機会があったら読んでみたい。