ペットショップ・ベイビーズ
★★★★☆
親は子供が生まれた時には、五体満足くらいしか望んでいないだろう。これだって十分凄い高望みだが。
育つに従って、学力や容姿や芸術性や運動性を要求してくる。親自身が持ってないものさえも。
遺伝子を人工的に弄れる科学力によって、子供のデザインが可能になった時代が舞台。
日本人の親が圧倒的に希望するのは、金髪碧眼彫りの深い、所謂白人タイプ。
冷静に考えればほとんどが劣性遺伝であり、希少性から尊ばれているに過ぎないのに、
街にはそのタイプの子供が溢れかえる。なんとも皮肉な話。
ペットショップでお気に入りの外見の犬を買うように、子供を購う大人たち。
表示されていた気立てではないと言って、いとも気軽に返品する。
自分の遺伝子を尊重しない人間が、理想の姿の筈の命を否定する。否「命」とすら思っていない。
べったりと子供に依存(共依存だが)する、主人公の実の母。子供の成功が自分への評価と思うタイプ。
対して、血統書つきの野良を拾ったとも言える、主人公の義母が、育ちは生まれを超えられるかと悩むが、
超えるのは親ではない。本人だ。親を恨み世を儚んでいるうちは、親の、世間の影響下にある「コドモ」なのだ。
読み始めは文章の軽さに慣れるのに苦労した。
主人公たちが高校生である事から、会話とのバランスを取る為に必要だったのかもしれないが、
それにしては主人公の育ての母の「自分はもっとトンガッた女」なんて古い言い回しもあるし。
20歳という年齢の対比を際立たせる為なのだろうか?私はこの義母と同年代だと思うがそれでも古いと思う。
あとは文章のアンバランスさ。小難しい熟語があるのに、簡単な漢字が使ってない。おかげで流れるように読めない。
「誰かのために作られた円形のステージのようだったが、そのステージに立つ者はいない」
これは「そこに立つ者はいない」でいい。若しくは「その舞台に立つ者はいない」くらいで。
推敲が足りないのか、敢えて強調したかったのか。強調するほど重要なフレーズではないと思うけど。
物語の展開としては、大体先が読めてしまったが、まぁ他に落とし所もないだろう。着眼点は面白かった。
タイトルは「カスタム・ベイビーズ」の方が自然な気がする。
遺伝子の枷、言葉の枷
★★★★★
「もしも親が子供の遺伝子を自由に加工できたら」というもしもがあった場合の、現代のお話であり、軸になるのは三人の少年少女とその親たちだ。
春野倫太郎は、親が望んだ才能を発現しなかったために、遺伝子操作をした会社に"返品"された過去を持つ。それを引き受けたのが、カスタマーサポート担当だった春野知佳だ。そんな倫太郎が予備校で出会った清田寿人は、親の宗教上の理由で全く遺伝子操作をされなかった子供。そして、アニメのキャラクターに似せて作られた冬上レイ。
親は自分の子供に期待をする存在だが、その期待には根拠が無いのが普通だ。しかしこの世界では、自分が子供に最上の遺伝子を与えた(あるいは与えなかった)という根拠じみたものがある。だからその期待は明らかな形を持っていて、無慈悲に子供をゆがめる。わずかのズレも排除しようとする。作品中で無条件に許してくれるのは、遺伝子的に何のつながりも無い親だけというのは皮肉なことだ。
一度課せられた枷は簡単には外れない。その中で三人は色々と足掻く。枷をはずすことに幸せを感じるのか、あるいは枷がかけられた(求められた)状態にあることに幸せを感じるのか、どちらがより幸せなのかがはっきりとは言えない世界なのだ。
薄暗い青春(笑
★★★★☆
前作の空気が好きで買いました!
今回も前作の方がいいかも…と思うとこはあっても
前作より面白い!って部分もあっていいと思います。
つかみどころのない男に、真っ直ぐでウザいくらいの男、不思議すぎてよくわからない女。
あたしのなかではそんな3人がひねくれながらも前に進んでいる話だと思います。
サブキャラもいい性格してて、個人的には春野(知)がもの凄いすきです^^
あと前作読んだ人にはわかる、前作のキャラがちらほらでてきててにやにやします(笑
とりあえず、前作を好きになったならこれも読んだ方がいいかもです!!
メディアワークス文庫。創刊。
★★★★☆
主人公達が殴ったり、殴られます。殴られたら、やり返します。
前作『カスタム・チャイルド』の世界観が気に入り買いました。
前作に比べ、盛り上げに欠けると自分は感じましたが、読みごたえが有ります。
アメリカ映画『ガタカ』や『機動戦士ガンダムSEED』のコーディネーター、『星界の紋章』のアーヴも一般人の生活は『カスタム・チャイルド』のような暮らしをしてるのではないかと、『カスタム・チャイルド』は想像させられ楽しませてくれました。