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旅する人びと (ヨーロッパの中世 4)

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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中世欧州の人々はなぜ、いかに旅し、近代を産んだか ★★★★☆
 中世ヨーロッパという文化圏は一昔前の「暗黒時代」という評価は一面的で公平でないのは事実としても、やはり同時代のイスラームや中国の文化圏からすると、大変立ち遅れていたの否めない。特に移動という点では、相当に範囲や手段は限られていた。
 しかしながら、やはり生身の人間であるから、その制約の中で、宗教や商売、外交のために長い距離を移動した。馬、ロバ、船、そして当時の自然環境・都市ネットワークを詳細に描き出してくれる。また、様々な社会的階層や集団が入り乱れているのも当時の特徴だが、これも女性や黒人奴隷、ロマやユダヤ人といったマイノリティ、病気や動植物の移動まで筆は及ぶ。
 なかなか現代日本人には感覚的になじみにくい世界ではあるが、これでもかというくらい充実した書きぶりで、その全体像がつかめる。
 また結論では、中世末期の危機をヨーロッパが乗り越え、いわゆる「大航海時代」を経てアジア、アフリカ、アメリカを従え、世界を一つにまとめあげていく「奇跡的大逆転」までを論じる。