太宰の本は気持ちがブルーになります。

個人的にはあまり好みの作品ではなかったが、ここまで読者の気持ちを落ち込ませるのか!と感心しました。
そういう意味で影響力のある素晴らしい作品なのかもしれません。

太宰の作品の特徴は「矛盾」が繊細に描写され、かつ矛盾に対して肯定的である点にあると思う。

特に「斜陽」では登場人物が持つ矛盾同士の複雑な絡まり合いが絶妙なバランスで表現されていて、
太宰作品の中でも最も太宰の才能を感じることができる作品だと、僕自身は思っている。

母でありながら、上原の妻に微塵ともなろうとせず幸福を見出したカズ子
貴族出身でありながら貴族社会を嫌い、麻薬に手を出してまで死ぬ気で「大衆」になろうとした直治
生き切るために血を吐いてまで飲み歩く上原
などなど…

ひとたび世の中の構造に目を向ければ、そこにはたくさんの矛盾が満ちている。
人はそのことを潜在的に知っているから、太宰の作品によって真理だとか共感めいたものを感じ取るのだろう。

矛盾に相対したとき、登場人物の答えもそれぞれ違った。
革命という形で自分の真理を創り上げたカズ子、犠牲となり死を選んだ直治。
しかしそこに優劣をつけるなく、肯定しているところに太宰の優しさみたいなものを感じた。

理解するというよりも、感じ取ることに神経を集中するべき作品だと思う。

たまにはかっこつけて難しそうな古典文学を読んでみようと思い、
手にとりました。

読んでみたら、確かに難解で、
文中に何度も蛇の描写が出てくるのですが、
物語の伏線として何かをほのめかしているのだろうと思いながらも、
私には最後までよく理解できませんでした。

また、主人公のかず子は上原さんに何度もラブレターを書いていますが、
携帯メールで用が済んでしまう現代に生きる私には、
ラブレターでのアプローチというのが非常に新鮮に感じられました。

「斜陽」というタイトルどおり、
日本の華族は衰退していく運命にあるが、
かず子は３０を境に新しい人生を踏み出していくという、
情景が対照的に描かれています。

　カバーが生田斗真さんヴァージョンを買いました。本文の感想は特に無し。梅佳代ヴァージョンはどうでもいい、松山ケンイチさんや生田斗真さんのヴァージョンを復刻して普及版にして欲しいです。『斜陽』の生田斗真さんヴァージョンのカバーですが、あれでは『斜陽』じゃなくてサスペンス小説みたいですよ。

　もはや独り歩きしているほど有名な代表作『人間失格』もそうだが、およそこれほど普遍性を有した文学は稀有。人間の心の綾を
えぐり出すなんて生易しいものではなく、精神の綾こそをえぐるのだ。
それはあまりに強烈な為に、普遍性がありながらもオール・オア・ナッシング、100か0を読者は体験するのではないだろうか。
この作品、主要人物は四人だが、もはやすべての価値観や葛藤を内包している。あえて下卑るもの、一途に革命を試みるもの、デカダンに
よって反抗するもの、生と死の狭間で達観しながら諦観するもの。すべてがリアルだが、押しつけがましくない。耳に微風を感じるように
優しく自然にささやかれているよう。
また本作を理解する上では、時局も考慮しなければならない。激動の終局。破壊からの建て直し。両者が繋がるその一瞬間においての
精神活動はあまりに長い。それが内向するか外向するかの差異によって、様々に枝分かれした一見するところのジャンルはできるが、
むしろそれらすべての結末ではなく、過程こそをカリカチュアしながら精緻に織りなすところに圧巻される。

静かな緊張感を持ちながらも、陶然としたリズムで刻まれる傑作。