賛否両論
★★★★☆
生まれながらの難病を持つ子供とその家族の物語。大ヒットした“My Sister's Keeper”と同じパターンです。
全てを犠牲にしてもWillowに尽くそうとするCharlotteと家族のギャップを縦糸に、親友でもある担当医Piperや生まれてすぐに養子に出されたMarinのエピソードを横糸として絡めて展開します。古今東西を問わず、我が子の幸せを願う母は強く、父親などはその足元にも及びませんね。後半の裁判はこれまでほどしつこくはなくさらっと進め、その代わり陪審員を選ぶ過程から見せるなど、工夫もされています。
(以下、ネタばれになります。)
主人公の家族だけが幸せになり親友Piperが余りに可哀想だなと思いつつ最終章に突入しました。初めて一人称の語り手としてWillowが登場したので「まさか・・・」と思いましたが、そのまさかでした。冷蔵庫の扉に張り付けられたまま現金化されなかった8百万ドルは結局のところ無駄になった訳で、にも関わらずPiperは街を離れ、ハッピーな人が誰一人いない全てが虚しく感じられる結末です。作者はよっぽどこの「パターン」が好きなのでしょうが、このラストは間違いなく賛否両論でしょう。“My Sister's Keeper”と同じでしょと言われれば、それまでですが。
子供を育てるには母性本能だけがあればよいのか
★★★★★
著者の本を読むのはこれで三冊目であるが、いずれも難病を抱えた家族の物語で、切なく辛い話である。今回の話は「Osteogensis Imperfecta = 骨形成不全症」と呼ばれる難病にかかった娘の話で、過去に作者が発表した白血病患者の娘「My Sister’s Keeper」や、心臓障害のある娘の話「Change of Heart」と似たような構成で書かれてはいるが、前二作を読んだ人でも新たな衝撃を受けるような物語である。
作者は、発言力の弱い、社会的に少数派に属する不治の病に苦しむ人たちを選び出して、その代弁者たらんとしている、と私には思える。世の中の大多数がそうであるように、これを読むほとんどの人は健常者であり、家族にも障害者が居るという家庭も稀だろう。作者は常にそういう人たちに対して、世の中にはこういう人たちも居るのですよ、と訴え続けているのだと思う。
次々と展開していく話に惹かれて読み進んでいったので、筋書きを述べることはこれから読む人に対して妨げになるから、唯一つだけ言っておく、「母親の子宮にまだ居る28週目に、この主人公は既に7箇所の骨折のあることが認められた。そして産まれてから6歳になるまでに五十数回の骨折を繰り返していたのである。」
盛りだくさんの内容で473ページと分厚い読み物ではあったが、筆者の巧みな筋書きと登場人物たちの交わす会話に惹かれて一生懸命に読んだ。
子供を育てるには母性本能だけがあればよいのか、道徳や理性の欠如が自分の夫や別の娘に与える影響を考えなくても良いのか、など考えさせる問題が山ほどあった。しかし、妊娠8ヶ月になろうとする私の娘には、あまりに恐ろしすぎて今は読ませたくない話しではある。