19分あれば、前庭の芝生を刈れるし、髪を染められるし、ホッケーの試合を3分の1見られる。19分あれば、スコーンを焼けるし、歯医者に歯を詰めさせることもできる。5人家族の洗濯物をたたむこともできる…。19分あれば、世界を止めることも、地球から飛び降ることもできる。
19分あれば、復讐することができる。
スターリングは、ニューハンプシャーにある小さな普通の、決して何も起こらないような町だった――ショッキングな暴力行為が充足感を砕いてしまう日までは。町の住民は解決に取りかかろうと正義を求めるだけでなく、悲惨な出来事で演じた役割を受け入れなければならない。彼らには、真実と虚構、善と悪、インサイダーとアウトサイダーの間の線は永遠に見えなくなっていた。裁判官の10代の娘、ジョージー・コーミアは事件に関わっており、状況の一番の目撃者かもしれないが、自分の目の前で起きたことが思い出せない。そして、裁判が進むにつれ、高校と大人の地域社会との間の断層が見え始め、親しい友人関係や家族を壊していく。
『Nineteen Minutes』はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー作家、ジョディ・ピコーの、これまでで最も生々しく正直で重要な小説。世に知られるわかりやすい文体で語られ、単純だが簡単には答えられない問題を投げかける。子どもが親にとって謎めいた存在になることはあるのか? この社会で人と違っていることにはどんな意味があるのか? 犠牲者が逆襲するのは許されるのか? そして――もしいるとしたら――だれかに他人を裁く権利はあるのか?
“My Sister’s Keeper”を気に入った方にオススメ
★★★★☆
息子の編入試験で一時帰国した際に、またしても米国パーパーバックと同じ表紙のマスマーケットを発見し、前作を飛ばして即購入しました。
今回取り上げるのは「いじめ」で、作者にしては地味?なテーマです。しかも刺激的なのは出だしだけで、その後はいつになくじっくりと落ち着いた目線を登場人物に向けて物語を深堀りします。心配した程妙に社会派振ることもなく、徒に欲張って無理矢理戦線を拡大することもなく、描写も丁寧で味わい深い箇所が随所に見受けられます。
最後にお約束のサプライズが炸裂しますが、今回は少しだけ手が込んでいて、「くそぉー、そう来たか!?」という感じです。“My Sister’s Keeper”を気に入った方は是非。
引き込まれる
★★★★★
誰もが互いを知っているような小さな町の高校で起こった銃乱射事件。
19分間とは、銃が乱射されていた時間のことで、その間に10人の命が失われた。
犯人の少年は高校に通ういじめられっ子。
被害者の一人は、裁判を担当する女性裁判官の一人娘のボーイフレンドで、少年をいじめていた一人。
その娘は、今は疎遠になってしまったが、少年の幼馴染。
複雑に入り組んだ人間関係を、担当する刑事、裁判官とその娘、加害者の両親、弁護人など、さまざまな視点から解き明かしていく物語です。
少年が生まれた17年前から現在までの出来事をたどる過去のパートと、事件から一年後までの経過をたどる現在のパートが交互に語られる構成になっています。
最後のどんでん返しまで、引き込まれて読みました。
大人たちの想像を超えた、子供たちの見えにくい、しかし明らかな勝ち負けがある人間関係は、現在の日本でも当てはまる部分が多く、読んでいて考えさせられました。
法廷用語も多く、またページ数も多いので、そうすらすら読める本ではないですが、ぜひ挑戦してほしい本です。
たぶん、もう一度読むと思います。
★★★★★
読み進むうち、どんどん重い気分になるのですが、
途中で読むのをやめることができる本ではありませんでした。
自分の3歳半の娘を思いながら読むからでしょうか。
子供のひたむきで純粋な心が社会のなかでどう変わってしまうか
[変わらざるを得ないか]、
いやでも向き合わなければならない時期をどう過ごすか。。。
強さとはなんだろう。
愛とはなんだろう。
彼女の本はこれが初めてなのですが、話の展開がとても独特だし、
言い回しも面白くでも難しく
最初読み慣れるまで時間がかかったのですが、
人物像も豊かで、内容が深く、
それゆえに読み終わったときには心に重みがずっしり残ります。。
私は、どうしても最後まで加害者をせめることができませんでした。
加害者と被害者の幼年期の姿が、娘と重なり、
いまでも思い出すと涙があふれます。
親になった人に読んでほしい一冊だと思いました。
シリーズもの?
★★★★☆
まだ読破していませんが、取り急ぎ:
P.60に見覚えのある名前=Jordan McAfeeが登場。
前作“The Pact"で被告Chrisの弁護士だった人物です。
思い出してみると、物語のフレームも“The Pact"と同じ。即ち
−母親が親友同士なのに、片方の子供は加害者、もう片方は被害者になる−
だからといって、本作品が二番煎じでつまらない訳ではありませんが、
少なからずHmmmとは思いました。
物語導入部の「学校での銃乱射」の描写は陰惨です。
映画「エレファント」が蘇り、思わず顔をしかめました。
深く考えさせられる名作です。
★★★★★
中学生と小学生の娘二人を持つ母の視線で読ませてもらいました。この小説を読んだからといって昨今の少年たちが引き起こす悲惨な事件の根本の原因が何であるのかわかると思っては間違いです。読むとますます問題の根の深さを感じて途方にくれるばかりです。ストレスだらけの現代社会のしわ寄せが弱者へと向かい、いつか耐えきれずに爆発する。「19分」という本のタイトルは本の紹介に書いてある通り、裁判で検事が陪審員に向かって言う言葉ですが、たった19分の裏側には決して注目されることなく誰も救いの手をさしのべることのなかった少年の暗く長い過去があった。そこに至るまでに親はどうすることも出来なかったのか、気がつかなかったのか?世間はとかく親を非難するが、決して親だけの問題では無い、と私は思う。教師は?同級生は? 周りの大人は?
それでも、加害者となった少年の母は裁判の証人台に立ち、「ごめんなさい。」と息子に泣きながら謝る。親としてあの時こうしていたら、この時あんなことを言わなければ、と今更どうにもならないもどかしさに謝ることしか出来ない。 そんな姿が焼きついて今も離れません。私も日々子供への言葉掛けの難しさに悩んでいます。毎日が後悔する様なことばかりです。責任問題に関わらず、大抵の親はわが子がまっとうで幸せな人生を歩む様に導いてやりたいと日々努力しています。でも、甘えた考えに聞こえるかもしれませんが、親だけの努力ではどうにもならないこともあることは確かです。
事件を取り巻く周囲の人たちについても作者は丁寧に書いています。加害者の両親、加害者少年の幼なじみの娘とその母の関係。重いテーマでありながらも絶望的にならないのは、事件を追う刑事の優しい眼差しとちょっぴりのロマンス、弁護士夫婦の軽妙なやり取りがありからでしょうか。最後まで飽きずに読めます。
(最後に衝撃的な事実が待っています。。。)