>まだ生きている僕には、(..略)蛆はわいていない。
こんな書き出しの「赤鬼が出てくる芝居」が小実昌節のハシリのようで、思い切り感動してしまった。コミさんの大事なネタである「兵隊もの」だけれど、生な描写のなかに、芝居気があふれかえっていて楽しい。
登場人物が芝居をするだけでなく、語り手も相当に芝居しているのにも注目。たとえば、
>あの時、走っていた僕は、どうも芝居をしていたのではないらしい。とすると、僕は何をしていたのだろう。
こんな語り口、語り手自身の自問というのもコミマサの世界の特徴だ。それが1955年という頃にすでに登場しているのだから嬉しい発見だ。「ポロポロ」あたりになると、そうした物語への懐疑がストレートに出すぎて、「もういいよ」という気分にもなるのだが、初期の、まだ題材にのめりこむ形で文の上手さが伝わるこの頃のが一番素直に読める。
いや、「ポロポロ」の純文学風の構成も立派なものではある。ただし、アタマで謎かけしておいて客を集め、バイが終われば謎を引っ込める、というのは香具師の定石だろう。それが格調高い物語に出てしまっては、ちょっといやだなと思う。
香具師の話なら「香具師の旅」など傑作が思い浮かぶけれども、ここに収録されている「やくざアルバイト」などほとんどエッセイだが、やはり滑らかで人懐こい語り口が楽しい。
戦後ものの「上陸」はハードボイルド調の秀作。英語にして読んでも楽しいだろうな。 書こうとする景色に対する視力が段違いなんだ。ヘミングウェイ勉強するよりタメになること請け合い!
>まだ生きている僕には、(..略)蛆はわいていない。
こんな書き出しの「赤鬼が出てくる芝居」が小実昌節のハシリのようで、思い切り感動してしまった。コミさんの大事なネタである「兵隊もの」だけれど、生な描写のなかに、芝居気があふれかえっていて楽しい。
登場人物が芝居をするだけでなく、語り手も相当に芝居しているのにも注目。たとえば、
>あの時、走っていた僕は、どうも芝居をしていたのではないらしい。とすると、僕は何をしていたのだろう。
こんな語り口、語り手自身の自問というのもコミマサの世界の特徴だ。それが1955年という頃にすでに登場しているのだから嬉しい発見だ。「ポロポロ」あたりになると、そうした物語への懐疑がストレートに出すぎて、「もういいよ」という気分にもなるのだが、初期の、まだ題材にのめりこむ形で文の上手さが伝わるこの頃のが一番素直に読める。
いや、「ポロポロ」の純文学風の構成も立派なものではある。ただし、アタマで謎かけしておいて客を集め、バイが終われば謎を引っ込める、というのは香具師の定石だろう。それが格調高い物語に出てしまっては、ちょっといやだなと思う。
香具師の話なら「香具師の旅」など傑作が思い浮かぶけれども、ここに収録されている「やくざアルバイト」などほとんどエッセイだが、やはり滑らかで人懐こい語り口が楽しい。
戦後ものの「上陸」はハードボイルド調の秀作。英語にして読んでも楽しいだろうな。 書こうとする景色に対する視力が段違いなんだ。
>まだ生きている僕には、(..略)蛆はわいていない。
こんな書き出しの「赤鬼が出てくる芝居」が小実昌節のハシリのようで、思い切り感動してしまった。コミさんの大事なネタである「兵隊もの」だけれど、生な描写のなかに、芝居気があふれかえっていて楽しい。
登場人物が芝居をするだけでなく、語り手も相当に芝居しているのにも注目。たとえば、
>あの時、走っていた僕は、どうも芝居をしていたのではないらしい。とすると、僕は何をしていたのだろう。
こんな語り口、語り手自身の自問というのもコミマサの世界の特徴だ。それが1955年という頃にすでに登場しているのだから嬉しい発見だ。「ポロポロ」あたりになると、そうした物語への懐疑がストレートに出すぎて、「もういいよ」という気分にもなるのだが、初期の、まだ題材にのめりこむ形で文の上手さが伝わるこの頃のが一番素直に読める。
いや、「ポロポロ」の純文学風の構成も立派なものではある。ただし、アタマで謎かけしておいて客を集め、バイが終われば謎を引っ込める、というのは香具師の定石だろう。それが格調高い物語に出てしまっては、ちょっといやだなと思う。
香具師の話なら「香具師の旅」など傑作が思い浮かぶけれども、ここに収録されている「やくざアルバイト」などほとんどエッセイだが、やはり滑らかで人懐こい語り口が楽しい。
戦後ものの「上陸」はハードボイルド調の秀作。英語にして読んでも楽しいだろうな。 書こうとする景色に対する視力が段違いなんだ。ヘミングウェイ勉強するよりタメになること請け合い!