アメリカで10指に入る資産を持つ、78歳の偏屈な大富豪トロイ・フェラン。その総資産110億ドルに関する遺言書が今、まさに公表されようとしていた。フェランの3人の元妻、がめつい息子たち、大勢の弁護士と数人の精神科医、それにおびただしい数のマスコミ関係者が固唾を飲んで見守り、全米中の人々がテレビ中継を食い入るように見つめる中、ひとりの老裁判官によって遺言書が読み上げられた。だが、フェランは死ぬ間際に遺言書を書き換えるという奇怪な行動で、遺された者全員に衝撃を与える。こうして、遺言状異義申し立て、数々の罪、そしてその罪のあがないへと続く、法律をからめたこの道徳劇の幕が切って落とされたのだ。
本書の主人公ネット・オライリーはこれまでに離婚すること2回、今は国税局に追われるくたびれ果てたアル中の弁護士だ。その彼が、フェランの遺言書に指定されていた謎の相続人を探しに、ブラジルの奥地へと派遣される。パンタナール大湿原にあるという人里離れた部落をめざして旅立ったネットは、途中散々な目に遭いながらも、ようやく宣教師レイチェル・レーンを見つけ出す。純粋な心を持つ彼女は、そこで部落民と生活を共にし、「神のおつとめ」を果たしていた。しょぼくれた弁護士は、レイチェルの計り知れない献身と思いやりに心を打たれる。やがて、伝染病による高熱の苦しみから解放されたネットは、これまでの生き方を変えてみようという境地に達するのだった。
一方、アメリカでは訴訟手続がだらだらと長引いていた。その間、グリシャムは、フェラン・グループの末裔である金の亡者たちに楽しいひとときをプレゼントしている。このどうしようもない親族たちは、既婚のストリッパーたちとのおふざけや麻薬、それにマフィアとの付き合いに数百万ドルの金を使いまくる。末息子のランブルなどは、自ら率いるロック・バンド「デーモン・モンキーズ」の大成功を夢見る、全身ピアスとタトゥーだらけのごろつきだ。レイチェルの救いの手によって、ネットはまっとうな生活に戻れるのか?貪欲な相続人たちはそれぞれの分け前にありつけるのか?一生を賭けた仕事の真の遺産とはいったい何か?
『The Testament』(邦題『テスタメント』)は典型的なグリシャム作品である。落ちぶれ果てた弁護士、うなる金、刺激に満ちた法廷シーン、そして人生で最も大切なのに忘れてしまいがちなことを扱った作品だ。本書はただ気高い心を描いているだけではない。どう気高くあるべきか、という疑問への手がかりとなる作品である。
深いエンターテイメントです、これは。
★★★★★
グリシャム作品の中でも異色です。
だってブラジルまで冒険旅行しちゃいますから!
グリシャムの法廷モノが苦手、という人でも手に取りやすいんじゃないでしょうか。
しっかりエンターテイメント要素を含みながら、
一部のアメリカ人が抱えるお金中心の生き方も皮肉ってます。
莫大な遺産を目当てに迷走する人達は、こっけいで大げさです。
でもどこか、実在する人のプロトタイプにも見えてしまう。
遺産相続問題と平行して、
弁護士・ネイトの頼りなさに超ハラハラさせられます。
重度のアル中のネイトが、この遺産問題に関わることでどう変化するか。
それがこの小説の面白いところなんじゃないかと思います。
下巻では、ネイトの快進撃が爽快に読めます!
アル中でよれよれのネイトからは想像できないくらいの活躍です。
結末は、本当に意外でした。
悲しい余韻を残しながらも、希望と救いがあって、何度も読み直してしまいます。
「――神はかならず、あなたが進むべき道を教えてくださいますから」
これはネイトと親しくなる牧師さん(←超カワイイです!)の言葉です。
今までの人生を深く反省して、一生懸命、変わろうと努力する人には、
神さまは味方してくれる。
…この言葉は、どこか結末を示唆してるみたいで意味深です。
宗教観にあふれてますぜ
★★★★★
TESTAMENTって
↓
A written document
providing for the disposition
of a person's property after death;
a will.
だね
んだんだ
今回は
宗教的な含意もあるってもんだね
おぉ
検認裁判を扱った作品て
なかなかないよね?
証言録取をこれだけ
わかりやすく
表現した作品もないよね?
倫理的にどうよ?
ってのは
あるけど
生々しくていいさ
んで
やはり贖罪と懺悔のテーマが
はいってるよね
グリシャムが宗教に目覚めたから?
この作品は
それはそれは深い・・・
うちは
ちょっと考え込んだけどね
主人公は
心のガイドに導かれたってことで・・・
読み返しますわ
巨額遺産の行方は?
★★★★☆
巨額遺産の遺言をめぐる相続争い。遺産の大部分の相続者は
名も知れぬ大富豪Troy Phelanの認知した娘 - Rachel Lane。彼女はブラジルの奥地で
原住民にキリスト教の宣教をしている。Troyの顧問弁護士事務所に所属する
Nate O'Rileyは優秀だが、アル中で何度も更正した人物である。
顧問弁護士Josh StaffordはNateをブラジルに送り込む。NateはRachelを奥地に探しに行き
探し当てることに成功するが、彼女は遺産を受け取ることに同意しない。
Nateはデング熱にかかり死の寸前まで追い込まれるが、一命を取り留める。
お金をコントロールできないTroyの子息たち。しかし遺産をねらい法定闘争
になるか、という展開で、どうやってRachelとの難問を解決するか、興味が
湧き、どんどん引き込まれる。
これは素晴らしい。読後感が何とも言えない
★★★★★
法廷ものお得意のグリシャム。エンターテインメントとしても実績のあるグリシャム。だからまず問題ないとお思いでしょう。
いやぁ、予想というか期待というか、を越えます。
アメリカのエンターテインメントは深いは。ほんと。
この小説をどういうジャンルにしたらいいんでしょうか。前半はほとんど冒険小説です。もちろんグリシャムですから、ある意味法廷ものです。特に、弁護士はもう掃いて捨てるほど出てきます。
しかし一番肝心なのは、多分この小説はある意味とても宗教性と言うか、信仰と言う事に関して特徴のある作品だと言う事です。その部分が、この作品を簡単にエンターテインメントと括れないこととなります。
で、たいていこれくらいある意味意表をついて(グリシャムものとして)話が進んで、最後のしめが、うーんっと、と納得いかないと言う事が多いんですが、この作品は違います。
エンディングも全く意表を尽きていますが、とてもすがすがしい、素晴らしいものです。
これは、是非おすすめの作品です。おもしろですよぉ。
盛り上がらないグリシャム。
★★☆☆☆
この頃のグリシャムの作品はあまり面白くありません。ビリオネアの老人が議論をよぶテスタメントを残し衝撃の自殺。続くグウタラ息子・娘たちのドロドロの相続協議、そしてアル中から立ち直りつつある弁護士が南米のどこかにいる(らしい)非嫡出子の相続人の行方を追う・・・・面白そうなプロットなんですが中盤以降ほんとうに平板な展開でページターナーというよりパラパラーと流したくなる感じ。でもグリシャムだから何かある、必ず何か・・・と期待しながら我慢してページをめくるうち、結局そのまま終わってしまったという感じ。でも最新作「King of Torts」はおすすめですから是非最新作をどうぞ。