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死刑長寿 (文春文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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笑った後で怖くなる、社会風刺の王道 ★★★★★
 講談調とでも言うべき独特のリズムで語られる6つの短編。
65歳以上の男に生殖能力があるかどうかだけで権利を決める「エレクションテスト」、
国内最長寿者が死刑囚である事実が判明してから巻き起こる騒動「死刑長寿」、
誕生ケーキのキャンドルの火しか知らない孫と空襲を知る祖父が囲む焚火「子供は火事の子」、
家族さえその内面に気付かない理由なき連続殺人者の淡々とした日常「なんでもない話」
空腹感さえ曖昧な飽食時代に食通などと恥を知れ、人間の喰う姿は「世にも醜いこと」、
己の怯えはどこから来るのか、実母の死に際の心中を模索する「現代語訳ワタクシ神話」。

 前半2篇はとにかく笑えました。何がって、登場人物のモデルがすぐ解る。
『しゃべれば失言、歩けば失態、座る姿はデカ文鎮』『外国首脳に立ち混じり、体格で劣ってなかったのは私だけ』
これは「エレクションテスト」作中の総理大臣の描写と発言ですが、日本人なら十中八九同じ人が頭に浮かぶはず。
切腹文化(?)まで持ち出す総理大臣のトンデモ発言には吹き出してしまいました。
 その他、都知事やら長野県知事やら、「死刑長寿」の総理大臣と女性外務大臣やら“時の人”が揃い踏み。
某都知事は女性蔑視発言絡みでよく非難されておられますが、ご自身にそのお覚悟はおありかしら?
 エレクションテストにて不合格とされた者を待つのは「ノム・ウツ・ウツツ」、つまり酒・賭博・薬物。
TVタレント兼映画監督巨匠の「おいらその歳じゃないけど、入れてくんないかな、くたびれちゃったよ」
なんてボヤキは、本当にご本人がおっしゃりそうで…

 「死刑長寿」の死刑囚は、実は殺人を犯してない。しかし殺したも同じではないかと長年自責の念。
言ってみれば古風な日本人なのです。もはや絶滅危惧種かも知れない。
それと関係なく国内最高齢という歴史の生き証人としての唯一無二の価値ゆえに、天然記念物扱いに。
事件の真偽には誰も踏み込まない。補償が大変だから。ではどうする?
女性外務大臣のウルトラC的力技解決法も当時ならでは。

 笑って笑って、さて…となった時にじわじわ来る。

 誇張が過ぎると言ったって、モデルとなる人物も状況も、現代日本なのです。
極論に走るには素地となる理論がある訳で、その素地に生きている事に気付く怖さ。
大火の経験がないために火を恐れない子供は、まるで私たち戦後世代を端的に顕しているようで。
戦争を知り「火垂るの墓」をものした作家なだけに、読後深く考えさせられるものがあります。
社会風刺なんですが ★★★☆☆
題名とカバー解説に惹かれて買った短編集です。
死刑って長期間執行されないこともあるようで,
帝銀事件の平沢あたりは,冤罪じゃないかって話もあったためか
死刑が執行されないまま90いくつで刑務所内で死んだんですよね。
タイトルとなってる「死刑長寿」は,昭和20年に死刑になって以来
ずーっと執行されず,いつのまにか118歳の世界長寿となった人の話です。
健康の秘訣は刑務所内の質素な食事だとか。
もちろんこの話はフィクションです。
そのほか高齢化社会など現代が抱えている問題をネタにして,
皮肉っぽい短編小説に仕立てたものがズラリと並んでます。
作者は,「火垂るの墓」で有名な野坂昭如氏。
たぶん,本人はユーモラスでシニカルな感じで書いているのだろうと思いましたが,
実際読んでみると,
どれもフィクションとはいえ遊びすぎというか
バカバカしすぎて退屈になってしまいました。
あるいは,ユーモア感覚は人それぞれなので,単にあわなかったのかもしれません。
野坂氏の作品は,まじめに書いたものの方がよいように思いました。