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文壇 (文春文庫)

価格: ¥550
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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   自らが夢見て、這いずり回り、そして切磋琢磨した得体の知れない砦「ニッポン文壇」。そこに跋扈(ばっこ)するさまざまな俊英や怪人たちを、大いなる愛情と哀切をもって描き切った意欲作。異様なまでに執拗かつ緻密な筆致で、当時の熱を孕んだ空気を鮮やかに浮かび上がらせた本書は、2002年に泉鏡花賞を受賞した。戦後のテレビや文壇の世界で、時代の寵児として栄光も辛酸も味わい尽くした著者だからこそなしえた偉業だろう。

   著者は1930年神奈川県生まれ。実は小説家となる以前に、CMソングやコント、テレビ台本などで早くから名を馳せ、「元祖プレイボーイ」の異名もとった。33歳で小説『エロ事師たち』を発表、37歳で『火垂るの墓/アメリカひじき』で直木賞を受賞し、戦後日本を社会の底辺から見つめた焼跡闇市派と呼ばれた。この後もサブカルチャーの先駆的存在となった雑誌「面白半分」編集長、歌手デビュー、また53歳で参議院選で当選するなど、常にその過激ともいえる行動で世間を挑発してきた。

   著者自身がずっと意識してきたという三島由紀夫や吉行淳之介、丸谷才一、重鎮の舟橋聖一、吉川英治、丹羽文雄、新進気鋭の大江健三郎や石原慎太郎、開高健、そして編集者たち。文壇という魔界にうごめく多数の鬼才たちを、同様に時代が生んだ野坂昭如という一鬼才が活写した極私的ドキュメンタリーだが、この時代のエネルギーと磁力が我々を引き付ける。それは失われた時代への羨望と憧憬が入り混じった不思議な感懐だ。(田島 薫)

野坂と文壇と金沢 ★★★★☆
 大衆紙や週刊誌に好んで作品を発表してきた野坂は、やはり論壇と文壇が厳として存在していた時代の人で、文壇に認められることを内心では希求しながらも、それに対抗せざるをえない、そんな生まれ育ちを背負って生きてきたんじゃないかと思います。
 後にプロボクサーになってみたり、田中角栄に反発して選挙に立ったり、朝まで生テレビで露悪趣味な毒舌をふるってみせたり、作家の本分たる作品よりも生き様のほうが世間に影響を与えた感も否めません。この作品からは、戦後焼け跡で1人育った彼の、溢れんばかりの寂しがりと認められたい気持ちとが滲み出してきます。多くの文壇に関わる人々を描写する中で、自分の抱える劣等感を余すところなく書くことを、なかには好ましく思わない人も多いんじゃないかと思います。
 この作品とこれまでの業績で、後に金沢由来の泉鏡花文学賞を受賞しています。個人的には、金沢に縁の深い同時代のライバルである五木寛之よりも、どこか漂うような野坂の過剰な人間臭さが好きだったりします。
戦後の『文壇』が克明に!? ★★★★★
 野坂昭如の小説は『火垂るの墓』『アメリカひじき』くらいしか読んでいなかったが、本書は圧倒的な面白さ。戦後すぐ〜昭和40年代半ばまでの、いわゆる野坂自身、もっとも脂が乗っていたいた時期の『文壇』、ようするに酒場での同時代を代表していた作家の見聞を独特の句点の極端に少ない文体で駆け抜ける。どこまでホントかわからぬが、月日まで克明に記した圧倒的な記憶力、読者はお気に入りの作家が野坂とどうかかわっていたかページをめくるのも楽しみ。吉行淳之介〜「第三の新人」のファンの読者、必読、か。
そっそくらてすかぷらとんか。にっにーちぇかさるとるか。のっのさかかあきゆきか。 ★★★★☆
あれはサントリーだったかニッカだったか。脳梗塞に倒れられていととは存知あげなかった。いま読めるのは、火垂るの墓、エロ事師たち、アメリカひじき他数編。圧倒的多作の人と言われる俤は偲ぶべくもなし。氏の数編を読むうち、体験の強烈さ、は認めるが。と思いつつ。しかし、この作品を読むなかに滲み出す、強烈な自己韜晦。考えてみればたいしたことない、などと他人に言われることもなし、そんなことなら、ほれと。氏をしてぽっと出と言わしめるも、そのなかにて身につけた文のリズム、パースペクティブの複数化。具体のディテールがいわゆる本質の嘘を暴くっていうのは深読みかもしれぬが。とにかく興味深く読めた。史料価値としても重要なんではなかろうか。
圧倒的なリアリティ ★★★★★
新刊の頃買い漏らし、そのままになっていたのを文庫で見つけ、出て来る人物、皆活き活きとしており、それもそのはず戦後文学の何回目かの絶頂期、テレビドラマになぜならぬ。主人公・僕はじめ、三島、丸谷、梶山、宇能みな魅力的。「お茶飲みません?」で短大生引っ掛けたもの、立原のくどくどしい紹介で逃げられるシーンなど、抱腹絶倒。エロ事師よろしくブルーフィルム上映のくだりなど、圧倒的なリアリティに、並のTV屋では到底、映像化できる範囲を超えているやもしれぬ。
昭和のころ ★★★★☆
野坂昭如さんが、まるでヴォイスレコーダーを相手にして一気に吐き出したような文体です。
それでも、当時の文学世界の匂いが生き生きと伝わってくる一冊です。