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座礁 巨大銀行が震えた日 (朝日文庫)

価格: ¥672
カテゴリ: 文庫
ブランド: 朝日新聞出版
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不祥事の連鎖を断ち切るための指南書的小説 ★★★★★
作家の中には、前職の経歴があったからこそ書けたという作品がありますが、
この『座礁』もまた江上氏の前職・第一勧業銀行行員時代に経験された
総会屋利益供与事件という強烈な体験がなければ生みだされなかったでしょう。

特に東京地検の強制捜査の描写は、
その渦中で収拾に奔走していた者しか知ることができない
臨場感や緊迫感を伴って実にリアルに描かれています。

フィクションという形をとっていますが、江上氏自身もインタビューで
「1997年の第一勧銀の総会屋利益供与事件のドキュメンタリー」と話しているように、
総会屋に長きに渡って数十億円という不正融資を続けた銀行の暗部と、
戦後最大と言われた都市銀行への地検の強制捜査が入るまでが、
一般庶民の私たちにも分かりやすいように描かれていて、読み応え十分です。

それにしても銀行の不正融資(不祥事)は、
まるで子どもが親の財布からお金を盗んで、いじめっ子に与え続けたように、
実に子供じみたことから端を発していてあきれてしまいます。
不祥事の連鎖を断ち切るための指南書的な小説ともいえます。
信用を売る銀行の背徳 ★★★★★
第一勧銀と野村證券を舞台とした総会屋事件を題材とした小説です。バブル景気に沸いた日本とその後始末が克明に描かれています。また、信用を一番の売り物にしているはずの銀行という業界が自らの融資で社会の悪を太らせていたという事実と、この期に及んでも責任の擦り合いの内部状況に怒りがこみ上げてきます。本書は実際に銀行に勤め、総会屋対策を経験した筆者で無ければ描けない小説だと思います。最近は総会屋という言葉も死語に近くなってきましたが、そういう時代があったという事実を刻む有益な本です。
第一勧銀の総会屋事件を題材にした、ノンフィクション小説。 一気に読ませます!! ★★★★★
1997年に日本中を騒がせた、第一勧銀の総会屋事件を題材にしたノンフィクション小説である。広報部次長である著者が壮大なドラマを臨場感あふれた見事な作品にしている。
そのため、一気に読ませてくれる1冊だ。

当時、この事件で「呪縛」という言葉が有名になったが、大きな組織が対面を維持しようと
無理をすると、どこかで「呪縛」にはまってしまう。

本書の最後の部分で太田副頭取が、自分の担当以前に日銀考査で銀行が隠蔽した行為を
自分の担当の時、日銀考査で隠さず明らかにせよ。と指示したことを頭取就任記者会見
で正直に話したところ、それを問題視し、太田副頭取の頭取としての資質に疑問があると
面白おかしく騒ぎたてたマスコミの無責任な姿勢には強く疑問を感じた。

過去に隠蔽していた事実を自分の担当の時に正直に表に出すことを批判されるなら、
過去を含めていろいろな問題を抱える企業は、正直にやり直すことができないではないか。

このように大義に生きる姿は非常に魅力的であるが、こうした生き方が
会社などの組織体にあっていかに困難であるかを考えさせられた。
映画よりもこちらを! ★★★★★
著者が経験した総会屋事件をつづった小説です。
解説にもある通り、ノンフィクションと言ってもいいほどの内容だそうです。
総会屋事件を題材にした小説や映画がありましたが、
そちらよりも本作を読まれることをオススメします。
何よりも当事者が生々しく書き表した世界を感じられます。
時間の経過などが克明に描写されており、とても臨場感があります。
主人公の渡瀬正彦が呪縛に真っ向から立ち向かい、
大義に生きる姿は非常に魅力的であると共に、
こうした生き方が会社などの組織体にあっていかに困難であるかを考えさせられます。
この作品は正直言って面白い。 ★★★★★
この作品は江上金融小説の中では優れている。江上氏の他の小説でよくある「あり得ない」、「そんな馬鹿な」がない。それもそのはず、江上剛氏が第一勧銀/広報部次長の時の、世間を揺るがした1997年「総会屋事件」そのもので、自分自身のことであるから筆致も力強く迫力がある。最初から最後まで話の流れは矛盾や不自然なことはない。企画、広報、総務、秘書、審査その他全ての描き方は違和感がない。登場する主人公、大洋産業銀行/広報部次長の渡瀬正彦は正に江上氏そのものだ。実際には北海道新聞の記者が嗅ぎ付けた一勧/六本木にあった問題融資であった。本書はフィクションとしているが、川神商事、住倉銀、共和相互銀、フィクサーの小野田、今太閤のの中田元首相の名が並び、それに大洋産業銀行となれば殆どノンフィクションだ。