国際金融史として読む本
★★★★☆
著者の本書の眼目のひとつは、序文に書かれている通り「ブレトンウッズ体制2」と呼ばれる見解を批判することであるようだ。米国が経常収支赤字を拡大させても、海外から米国に流入する投資・金融資金は絶えることがことはなく、このことが米ドルが基軸通貨であることの条件であると同時に結果であると考える見解への批判である。
しかし、著者の論述は1944年〜1971年の旧ブレトンウッズ体制、60年代の金プール協定とその破綻、日本における固定相場制離脱、ポンドの歴史など過去の分析に専ら注がれている。
「ブレトンウッズ体制2」の見解を批判するのに、こうした過去の歴史分析は、全く無駄ではなかろうが、ストレートなものとは思えない。むしろ、米国が許容される対外的な不均衡の規模が、投資・金融のグローバル化により1980年代よりも2000年代には明らかに拡大したのだが、それは無限ではないことを言えば済むことだろう。
だからむしろこの本は国際金融史として読むべきなのだろう。