グローバルインバランスを理解する
★★★★★
大変丁寧に行われた実証分析を通じて、対外不均衡問題を紐解いている良書です。対外不均衡の分析は、80−90年代にわが国では大変に議論が活発でしたが、その際は主に日米間の不均衡を議論していました。本書ではアジア、そして産油国などにも目を向け、この10年ほどに急速に進んだグローバルインバランスを理論的・実証的に分析している苦労策です。
特にインバランスを構造的・循環的な要素に分解して、その数量的なインパクトを計測し、園背後にあるメカニズムに解釈を与えている後半部分は読み応えがありますし、このインバランス問題の本質を理解する上で大いに役立ちます。決して、根拠なき憶測などをせず、丹念に実証結果から読み取れることを丹念に説明している姿勢に、研究者としての良心が感じられます。手元に置いておく価値の十分にある好著だと思いました。