「警察予備隊」では括れない自衛隊の歴史
★★★★☆
教科書では「警察予備隊」を母体とすると括られている「自衛隊」の誕生の物語です。陸海空それぞれが異なる母体によって作られたということがわかります。陸海空の違い(例えば、食べるなら陸はおにぎり、海はカレー、空はハンバーガー)の背景を知ることができる良い本です。
【おススメな人】自衛隊初学者を卒業したてで、自衛隊をより知りたい方
【おススメでない人】既に自衛隊のことをよくご存知の方
それぞれにことなる自衛隊誕生史
★★★★☆
第二次世界大戦終了後、日本の陸海軍は解体される。
その後、朝鮮戦争とも関連して警察予備隊が編成され、保安隊に改組、そして自衛隊が誕生する。
そういった自衛隊誕生のアウトラインは高校レベルの知識である。
では、もう一歩踏み込んだ自衛隊誕生の経緯は?と聞かれたらなかなか答えられる人は少ないであろう。私もその一人である。そもそも陸・海・空それぞれの自衛隊の成立に異なる事情があったことすら知らなかった。
本書では陸・海・空それぞれ事情の異なる自衛隊の成立を事細かに論じている。
人名やデータが細かすぎて今ひとつ重くなっている感もあるが、精緻に論じているという解釈も出来る。論の精緻さは最近の新書の範疇を越えるものである。
米軍の影響の陰の濃い陸上自衛隊、旧海軍が主導権を握っていた海上自衛隊、旧軍から独立した構想が米軍の思惑と一致して成立した航空自衛隊。
いずれもアメリカ側の主張を一方的に受け入れたのではなく、困難な交渉を乗り越え、日本側の意向を盛り込ませた部分も多い。占領統治下、しかも軍関係の問題というと日本側の意向など無視されていたかのように思いこんでいたが、意外や意外、かなり日本側の役割が大きかったことも窺える。
自衛隊の存在に肯定的な人も否定的な人も一度は本書を紐解いて自衛隊誕生の経緯を振り返ることは無益ではなかろう。
一筋縄ではいかなかった自衛隊の誕生
★★★★☆
陸上・海上・航空の3自衛隊の成立について詳述した本。陸上自衛隊が完全にアメリカ主導で作られたのに対し、海上自衛隊がY委員会を中心とした旧日本海軍の人間が中心となって作られたということや、アメリカ側の度重なる兵員の増員要求に対して日本側がねばり強く抵抗していたことなど、一筋縄ではいかない自衛隊の成り立ちというのがわかります。特に日本側の抵抗はかなり頑強だったらしく、アメリカでは「日本政府に兵力増強を呑ませるには在日米軍の撤退しかない」という意見を言った人もいるそうです。
また、もともと筆者がパージの問題の研究からこの問題に取り組んだこともあって、自衛隊の誕生とパージの問題の絡みもかいま見えて興味深いです。
やや細かい数字が多く読みにくいところもありますが、戦後史を知る上で貴重な本だと思います。