しかし、現実には、朝鮮戦争勃発以来、冷戦終結後の今日に至るまで、あらゆる意味で日本の防衛、そして太平洋地域の安全保障は日本の生存のためには最重要な事柄でありつづけた。単に、日本人がそのことに触れたがらなかっただけなのではないだろうか。
日米安保体制、日米同盟という良好な関係が実は、連綿と続いていたことが、戦後の日本の平和に如何に貢献してきたかは、寧ろ、冷戦終結後の現在だからこそ、国民全体は冷静に理解を示し始めている。
この強固な日米同盟関係を支えてきたのは、実は、一度は太平洋で戦った、日米の海軍とそれを引き継いだ、米海軍と海上自衛隊の人々の深い友情があったからだと本書は説く。
このような友情がどのように芽生え、どのように育まれて継続されてきたのかを、実に丹念に資料を紐解き、又、インタビューを重ねてまとめた本書は、中々重厚だ。
友情は無私の交流と、相互の理解が不可欠だ。海の友情によって支えられてきたこの日米の友情関係が、政治レベル、国民レベルで広がることを大いに期待したいものだ。
ところで、著者の実父はあの、海軍をテーマにした著作で有名な阿川弘之だが、その子息が、同じく海をテーマにしてしっかり重厚な著作を行ったことは、何とも嬉しい思いがする。