最近、さまざまな方面から注目を集めている「北方行」を中心にして、中島敦の「習作」「エセイ」「未定稿」を一冊にまとめてあります。「校友会雑誌」に発表された「下田の女」をはじめとする諸作品、「北方行」「プウルの傍で」等の未定稿、「鏡花氏の文章」等のエセイです。すべて新字・新仮名表記を採用しています。
　「李陵」や「弟子」「山月記」などの完成した物語世界より以前に、時代に向かい合った本格的な「現代小説」を志向していた中島敦。その文学のもう一つ別の可能性がここに開示されます。
　収録作品は、以下の１５点。初出等の情報を加えました。

「下田の女」「ある生活」「喧嘩」「蕨・竹・老人」「巡査の居る風景」「Ｄ市七月叙景（一）」
「北方行」「プウルの傍で」「無題」「セトナ皇子（仮題）」「妖氛録」
「鏡花氏の文章」「十年」「旅の手帖から」「章魚木」