The Birth of the Copenhagen School
★★★★★
欧米の安全保障研究界の間で、コペンハーゲン学派と呼ばれる研究者達の中心人物であるブザンとウィーヴァーの代表作である。この本はブザンの傑作People,States and Fearから大きな理論的躍進がみられる。ブザンは当時、国家が安全保障の主体・客体であり「人間の安全を保障するなら強い国家(軍事的ではない)を作ればいい」と論じていた。ところが、この本ではポストモダンの学者であるウィーヴァーとの協力によって「国家は未だなお重要だけど、主体・客体は安全保障のセクター(イッシュー)によって変わる」と大きな歩み寄りを見せている。とりわけ、安全保障研究の主流であった科学実証主義を批判した社会構成主義的な「セキュリタイゼイション」は画期的な議論ではある。しかし、主体が社会的に構成されるにも関わらず、その主体が脅威を認識するさいには客観的になってしまうという批判も挙げられる。多くの研究者達の間で批判の標的になっているということは、この本が!いかに貴重な業績であるかを物語っている。