変わるならそれに合わせて対策すればいいじゃない
★★★★☆
環境・食料・エネルギーなどなどについて、両氏の談話形式で論じてゆく。
変わるならそれに合わせて対策すればいいじゃない、といった内容。
やはり、識者の考え方を知るのは勉強になるなー
「本質を見抜く力」が付いたかどうかは知らないが、視野が少し広がった気がする。
具体例から考えよう議論しよう
★★★★★
具体例から考えよう議論しようという、大変読み応えがある本です。
竹村さんの図2(p14 オイル算出量のピークによる価格の暴騰)の図が向こう20〜30年先の未来を示していると思いました(根拠は、大油田の発見は1965年をピークとして減少していった。大油田からの供給はインフラ整備を含めると50年後になるタイムラグがある)。資源多消費の経済発展はますます進むと、石油が必要なだけ供給されることを前提条件としている文明は行き詰まるし、有限な地下水を強引に汲み上げて農産物を大量生産・供給することも行き詰まると。ということは、2030年あたりを境に「世界エネルギー、世界農産物破産」の影が射し始める可能性があります。1枚の図が未来を暗示しています。あと30年位の準備期間で、日本も年々の収入に応じた国家の生活設計へ移行していくことが安全策のような気がします。
養老さんの2生活圏構想(都市と田舎)は、抜群の着想かも知れません。国民全員が年中フル操業する必要はなくなるので、夏場の暑い時期は、酷暑の大都市から涼しい田舎へ帰り、田園生活する(多少の農業もやってみる)。その間、電気使用量は1/5になるでしょう。養老さんが「環境を知るとはどういうことか」で言われている「自然は解である」を日々見て過ごすのは、無為ではなく実り豊かな行為です。「骨董の鑑識眼は、本物をたっぷり見ること」といわれるように、本物の「自然の解」をたっぷり見ることは心を本物にしますし、科学技術にとっても豊かな源泉になると思われます。
神門さんの農業実態観は、少し殺伐としているように思いましたが、全体構想が必要な時期になっているように思いました。本気のある人が農業へ移ることが円滑になれば、かなり緩和されるのではないでしょうか。
共感する部分としない部分
★★☆☆☆
が多々ありました。養老孟司というひとはあまり好きになれないなあ。温暖化対策意味無しといいつつ、温暖化対策の切り札と称する燃料電池のCMにでていたり・・・というかCMの燃料電池は温暖化対策と言うより、ガス増販装置だし
いつもの養老節です。気楽にどうぞ。
★★★☆☆
養老センセが元建設省の河川局長と環境、食料、エネルギーをキーワードに対談する。基本的なコンセプトはモノにこだわりましょうと。唯物論の物ではなく、実際に触れて五感で認識できるモノ。
石油を皮切りに、水、温暖化、少子化、食料などについて独特の視点から考える。例えば、温暖化すると言うけど、そのシミュレーションって今のまま人口が増えて化石燃料を使い続ける前提だよねえ。それって可能なの?
100年後までこのペースで石油や石炭って使い続けられるの?無くなったら終わりなのに誰もそれは考えてないよね。
それに日本の場合、少子化するんだからエネルギー消費って減るよねえ。温暖化して雪が降らなくなっても困らないような政策、人口が減っても困らないような政策を考えようよ。てな具合。
ま、毎度のことです。
石油依存の文明をぶっ壊せ!
★★★★★
国土河川行政のプロである竹村氏を招き、日本の環境・エネルギー問題の本質を抉る爽快な対談集。
データを基に問題提起する竹村氏と、それをモノという視点から解き明かしてゆく養老氏の手さばきが見事だ。歴史的な事象すらも、養老氏の手に掛かれば、地学や物理学の観点から見事に説明されてしまう。今ではあまり省みられることのなくなった博物学的な『知』の低力を見せ付けられ、改めてそのスリルに感心させられた。
『アメリカの覇権は、すべて一九○一年に石油が大量に出たことから始まっている』『アメリカの穀物は全部石油に依存している』『ビル・ゲイツの年収はアメリカ国民の下層四割の年収の合計に匹敵するそうです。そんな社会はそれだけでもう異常ですよ』『水の限界が中国の限界』『僕は官僚を認めているのです。人数半分にしてもいいから給料倍にすればいい。そうすれば彼らはもっと働くはずです』『戦後の民主主義の最大の失敗は市民を作れなかったことだ』など、いちいち挙げていたら切りがないほど斬新かつ本質を突く発言に富んでおり、余りに感心したせいか読み終わってみたらどのページも鉛筆の下線で殆んど真っ黒になっていたほどだ。
それにしても、最終章で養老氏が語る言葉ほど重く心に響くものは無い。『たとえばここまで平和になって、自殺が増えていることが信じられません。それで福祉などと言っても仕方が無い。結局、生きる意味がなくなってきているのです。(中略)乱暴なことを言えば、国民の元気がだんだんなくなっていく文明なんて、ぶっ壊してしまってもいいと思う』これこそ正に、石油依存の文明を養老氏が痛烈に批判する所以であろう。
尚、ゲストに招かれた農政問題の権威である神門氏の、日本の農業が農地の転用期待により如何に歪められているかと言う指摘は、農政問題の核心を突く瞠目すべき論点であると思われた(H21.5.30)。