かげふみ
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――きみの身体のなかで、いちばん気に入っているのは足のうらなんだ。たぶん、いちばんふれあっているからじゃないだろうか。
影はきみのたったひとりの友達なんだ。
いつだってきみと一緒。遊ぶときも、寝るときも、叩かれてしまうときだって。
きみがお母さんに捨てられてひとりぼっちになってしまったとしたって、それは変わらないことだった。
でも近頃、きみにはなにか欲しいものができたみたいなんだ。
クリスマスの季節、きみはそのプレゼントをねだるために、サンタクロースを呼ぶ準備をはじめた。
きみは街を歩く。楽しげな笑い声が響いてくる家々の窓の向こうを、じいっと覗き込みながら。
ねえ、窓の向こうには何が見えるの?
教えてよ。きみ、サンタクロースに何を頼むつもりなの?
訊いても、きみは秘密だよと言って、にししと笑うばかりなのだ。
谷山浩子の歌、「よその子」にインスピレーションを受けて書き下ろした、
「影」の二人称で語られる、ひとりぼっちの少年のお話。
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文庫本換算:64ページ