懐かしい匂いを感じる作品でした。山川直人さんに興味をもった方に、最適な本だと思います。個人的に、のら猫がお気に入りです。ふご　ふご

08年から09年に掛けて連載されていた分に描き下ろしを加えた全二十篇の作品です．

私鉄沿線にある小さな町，そこに暮らす人たちの何気ない日常を切り取った物語で，
具体的なストーリであったり，彼らの背景や関係が細かく語られる事はないのですが，
会話や暮らしを覗いているうちに，少しずつ物語に膨らみを感じるようになってきます．

また，別の話に出ていた人がこちらではその他大勢として町の中に紛れているなど，
小さな『繋がり』が，一つの町での物語という事をさりげなく印象づけているようで，
ハッキリと『終わり』が描かれていないのに，どこが一区切りがついたような最終話も，
少し切なくもほっとさせられ，その後の色々を想像してしまう心地のよい余韻が残ります．

丁寧で暖かみのある絵柄，耳（？）に残る特徴的な擬音とこの漫画家さんの魅力は充分．
ノンシリーズという事もあって，初めての方にもお薦めしやすい1冊ではないでしょうか．

この人の作品は、基本的にいつも同じような内容。
しかし、その内容こそが素晴らしい。木のぬくもり、古本の感触、コーヒーの香り……
作者自身がそれを愛していることがわかるほど、読み手の五感にも訴えてくる。そして、それらに囲まれたキャラクターと世界は自然と存在感を備え、描かれていないところまで、彼らの生活を感じる。。
みんないいけど、特にお気に入りは「道順」「おねえちゃん」「町に流れる声」「古本堂主人」あたり

　まるで版画のような作者独特の世界観を感じさせる版画版三丁目の夕日的な作品です。
　ちょっと時代を感じさせる羽森町を舞台に、絵描きの青年、その青年に心を寄せる女子大生、冴えない漫画家、喫茶店ユモレスクの店主、古本屋のオヤジ(ちょっとあくどい(笑))、ハンバーガーショップでバイトする女の子等が織りなす人間模様とちょっとイイ話が描かれています。