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ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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全国の寄せ場化 ★★★★★
本書では釜ヶ崎を主たる舞台に、野宿者をはじめとする貧困に直面する人々の実態に迫った渾身の書である。そこには釜ヶ崎の労務者と現代の日雇い労働者の驚くべき類似性が見えてくる。派遣会社と衣を替えた手配師、ドヤもネットカフェ・レストボックスも簡易宿泊所としては殆ど変わらない。そして野宿への転落の危機。時代が変わっただけで、世の中の矛盾の最先端で貧困にあえぐ姿は驚くほどの類似性を呈している。

釜ヶ崎も寄せ場としての機能が衰退し、福祉の町へと変貌しつつあるという。かつて釜ヶ崎や山谷といった地域が占めていた役割は広く拡散しつつある。全国の寄せ場化とは言い得て妙である。しかも携帯電話といったツールにより相互の関係性が希薄なまま低賃金労働に従事する現代の日雇い労働者たちはかつての労務者たち以上の貧困の狭間に陥りつつあるのではないか。

野宿者を単純に生活保護を受給させ、アパートに入居させるだけでは貧困は解決しないという指摘は実に考えさせられるものがあった。
野宿者には野宿者なりのコミュニティがある。アパートに入居することによってかえって社会性の貧困に陥る。生活保護を受給したことにより、空き缶拾いや段ボール集めをしなくて良くなることにより生活に張りがなくなる。
貧困とは単に金銭的な問題でないことを実感させられる。究極の貧困である。

釜ヶ崎という伝統的な貧困の最前線で究極の貧困を実感してきた著者である。貧困の実際が迫力を持って伝わってくる書である。矛盾の最先端でもあった釜ヶ先は日本の究極の貧困を見るための鏡である。
本当はすぐそこにある生活 ★★★★★
先日、友人ふたりがネットカフェ難民について、

「ネットカフェ難民ってなに!?」

「まともに働いて月10万もいかないなんて考えられない。」

などと嘲笑的に話しているのを聞いた。

生田さんのお供をさせてもらい、
釜ヶ崎の夜回りに参加したこともあり、
内心反論したい気持ちでいっぱいだったが、
感情ばかりで反論するだけの理論武装がなく、
苦虫を噛みつぶす思いで気持ちを抑えてやり過ごした。

そのようなこともあり、夜回り直後に購入してあった
生田さんのルポ「最底辺」を大変興味深く読んだ。

前半は、実体験に基づいて
野宿者≒日雇労働者の実態や釜ヶ崎での出来事について
臨場感たっぷりに書かれており、
生田さんやその他の方の感情がぼくの内に蘇るようで、
つらい気持ちになったり、不安になったりしながら夢中で読んだ。

後半は、野宿者問題に対する考察が書かれており、
特に、仕事をイスに見立てた「イス取りゲーム」の話、
落ちるときは一段一段だが、
上がるときは大きな崖になっているという
カフカの階段の話はとても分かりやすく参考になった。

また、野宿者を差別する人たちの持つ偏見の根底には

 「この国には望めば万人すべてに仕事がある」
 
 「この国では十分な社会保障制度がある」
 
 「助けてくれる家族や友人などが人には必ずいる」

といった妄想があることも解説している。

これらを妄想としてしまうのは、大げさすぎるかもしれないが、
本当に最底辺の生活をしている人ほど、
これらが現実である機会は少ないのも事実だろう。

失業率が上昇しているといったニュースを
日ごろから頻繁に見聞きしているにも関らず、
当事者でない自分にはまったく臨場感がないまま、
「望めば万人に仕事がある」的な考えを、
ぼくも持っていたことに気づいて、
自分の想像力のなさが恥ずかしくなった。

今ならば、冒頭のふたりの友人の顔に浮かぶ嘲笑を
消すくらいの説明はできそうな気がする。

夜回りに参加した後、
野宿者の販売する雑誌ビッグイシューを
購入する程度のこと以外、特になにもしてこなかったが、
改めてなんとかしたいという思いが込み上げてきた。

生田さんについて、
他の職業をやりながらでもいいだろうに、
あえてなぜ日雇労働者として生きながら、
野宿者を支援するのかとの疑問を持っていたが、
その答えとして生田さんの気持ちをそのまま、
ぼくの内心においてもらったような気がする。
浮浪者の考え方が根本的に変わる。 ★★★★☆
路上生活者の実態を20年に渡り追いかけた集大成。著者は彼等の実態を追うばかりではなく、実際に路上生活をして肌で感じている所が凄い。記述には若干の偏りがあると見受けられるがそもそもルポだししょうがない。またその偏りを除去しても余りある最底辺の現状が浮き彫りになっている。

最先進国の日本に居ながらにして伝染病にかかり、路上で凍死し、若者から暴行を受け悪徳業者の金づるにされる。学歴が低すぎたり身体に障害があり普通の仕事に就けないが生活保護は受けられない。そんな人々がどんどん底辺に転落していく。しかし世の中は彼等に冷たく偏見の眼が止む事は無い。

浮浪者に関して親が子供にこう言う。

「自業自得だ」
「目を合わせるな」
「話しかけられても無視しろ」
「悪い事しているとあんなになるぞ」 と。

身体障害者にこのような事は言えないはずだ。だが浮浪者には平気で言える。
何か違和感を感じたら、是非一読していただきたい。本書にきっと手がかりがあるはずだ。
良質のルポだが、どうかと思う部分もある ★★★★☆
日雇い労働者や野宿者の支援をした著者の経験が、いい方向で出ているルポルタージュだ。すなわち、(ア)日雇い労働者や野宿者の実際、(イ)行政や市民がいかに偏見を持っており、それがために(主に)野宿者が過酷な状況に置かれているか、(ウ)問題が構造的であること、など、日雇い労働者や野宿者の問題についての穏当な知識が得られる本である。

ただ、著者の主張に若干の疑問がある。結論自体は変わらないだろうが、就労を第一義にするのがいいかは疑問を留保したい(就労できないと思われていることが偏見の一因だと思うから。就労の有無を問わず人間が尊重されるべきことを基調にしたほうがよい)。また、この本の主題ではないことを承知で書くが、仕事って、そんなに簡単にできるのか?また、安定雇用が妥当だとして、すべての人に安定雇用は可能なのか?

以上、第1段落で星5つ、第2段落で1つ減らして、星4つ。
一気に読みました。それくらい面白い。 ★★★★★
野宿者問題に長年関わったというか、自分も野宿者と同じ生活を体験してきた方が、
興味深い問題点をいくつも提示しています。

社会構造が「極限の貧困」の結果としての野宿を生み出している。
この主張はなかなかに的を射ています。
いや、納得できる材料をたくさん挙げているので、的を射ていると思うのです。
ここまで、生々しく野宿者について語っている文章は初めてなのです。

野宿者襲撃事件の項、こんなことをする大馬鹿野郎が居るのかと
非常に腹立たしかったです。

日雇い労働者をトラックに乗せすぎて、指導を受けたある企業に対する皮肉などは、
読んでいてついにんまりしてしまいます。
かなりの書き手だなあと思いました。

ただ、読んでいると、もどかしくなることがあるのです。
これだけ辛い日常を送っている人々が居るのに、
何も出来ない、いや、しようとしていない自分が居る。
本当にもどかしい。今、自分が払っている税金が有効利用されて、
そのようなシステム作りに役だったらと思うけれども、
国にはあまり期待できない。より、もどかしくなります。

実体験に基づいた、よいルポであるとともに、
建設的なプランを示した意見書でもあります。
この問題に興味がある方は、ぜひご一読を。
私のような興味がなかった人間が、かなり感情移入してしまうくらいの迫力があります。