どんどん物語りに引き込まれていきます!
★★★★★
90歳(あるいは93歳)になり老人ホームで暮らす気難しい老人、Jacobが、自分の人生を回想する形で物語りは始まる。あと10日で名門コーネル大の獣医学部を卒業することになっていたJacobに、人生を変える悲劇が訪れ、Jacobはとあるサーカス団で動物の世話係として働くことになるが・・・。
Jacobのサーカス団での様々な経験にどんどんと引き込まれていく一方で、時々物語は93歳のJacobに戻るのだけれど、この戻り具合がなんとも絶妙のタイミングでニクイ!サーカスでの逸話や恋愛模様はそれだけで魅力的なものだけれど、私は「老いたJacob」が、半ばあきらめながら、でもあきらめきれずに時に憤りながら、「老いるということについて」語るのにも結構惹かれた。老いって、怖いなと思いつつ。
巻末インタビューにもあるように、著者がじっくりとサーカスについてリサーチしたことをうかがわせるエピソードや描写があり、説得力があるがゆえに、勢いというか、力強さがあると思う。加えて、JacobとMarlenaの関係も上手く描かれていて、胸キュンポイントもばっちり!
泣けるところでは泣き、笑えるところでは笑わせてくれる、そしてまた、人生について、老いについて、愛について、考えさせてくれる作品。
英語は、「簡単」と聞いていたけれど、確かに一文は短くて単純な文は多いけれど、サーカス用語(?)にとまどったのと、会話文がカジュアルで一般的な日本人英語学習者には分かりづらい(いわゆる、1930年代の労働者階級の話し言葉なので・・・)という難点はあると思う。この時代特有の語彙・表現などもでてくるので、その当たりは辞書をひく必要がでてくるかも・・・。でも、文法的に難しいということはなかった。
ロバート・パティンソンの主演が決まったからという理由だけで読んだ本だったのだけれど、とてもいい作品だったので、なんか得した気分!
これは喜劇の上をゆくハッピーエンドだと思う。
★★★★★
私はあまり読むのが早くはないんですが、読むの延べにして2週間はかかりませんでした。
本書は物語の構成がすごくしっかりしていて、物語の進行がテンポよく話も面白くて興味がつきなかったことと、
もんすごくはっきりしたアメリカ英語で、サーカス用語が多かったにもかかわらず調べやすかったことがあります。
本書は、1930年前後の、世界恐慌後の禁酒法とspeakeasy の時代に
不況の中で生き残りをかけたサーカスで獣医を7年間やったことのある、
今は93歳の老人でホームで認知症の同居者たちのなかで、薄れゆく記憶力や意識を半ば自覚しながら、
それでも一般の人が考えるよりもまだまだ老人の域には達しきれない人物の、
若き日の喪失と挫折と性への目覚めから恋や冒険の回想として物語は進んでゆきます。
物語的には、93歳という、社会的に抹殺されそうな危機感に義憤を感じながらじっと耐える老人と
血気盛んな20代そこそこの青年という正反対の一人の人物の物語を平行させながらも、
新参者に対するどちらかといえば軽蔑と敵意の混じった扱いとか、
食堂の座る位置が恒に固定されていることとかに代表される集団内のヒエラルキーの様子が、
時代や場所や立場を変えてもオーバーラップされていて、サーカスという特殊な社会を描きながらも、
普遍的に人生を描いているところがいいですね。
また、各章の物語が始まる前に、プロローグとして、物語のkeyにあたる部分が書かれていて、
最初はなんのことか全然分からないのですが、読み進んで、その場面に行き当たったとき、
あとの結末が待ちきれなくて、本書を手放せなくなり、最後の100ページくらいは一気に読んでしまいました。
そして、さらに、最後には喜劇を超えたハッピーエンドが待っています。
老いるということ、老いた人にどう接するか、についても、考えさせられるものがありました。
私が読んだペーパーバックの版には、物語の最後に、著者へのインタビューがあり、
サーカスの詳細への取材がどんな風に行われたか、など、興味深く読むことができました。
また、更にそのあとには、読書会をするのに良さそうなトピックや設問が用意されていて、
教材としても使えそうな一冊だということを付け加えておきたいと思います。
気分爽快
★★★★★
高校程度の英語力で、楽しみながら読み進めることができます。友情。誠実。人間の楽しみとはなんだろう。様々なことを学べます Also read an 極度なスリラー Tino Georgiou--The Fates.
サーカスのイメージ
★★★★☆
he Great Depression時代のアメリカのサーカスを舞台にした物語。サーカス、という言葉と題名に惹かれて読み始めた。華やかな舞台の裏のなにか暗い、おぞましいものが隠れているイメージ。著者がこの時代のサーカスについてよく調べていて、物語のなかに出てくるいろいろなエピソードは、実際に会った事柄を使っているらしい。物語の内容は私の持っているサーカスのイメージに当てはまっていて(結構ダーク)、ラストはちょっとあり得ない気もするがほんわりしていて、楽しんで読めた。
サーカス象に水を
★★★★★
面白かった。大恐慌時代を背景に、殺人、復讐、愛をテーマにしたシーンの展開は映画を観るような迫力だ。ちょと不器用だが優しく正義感の強いジェイコブや、とんでもないビョーキ男だが、セックスアピール満点のオーガストといった人物たちの魅力にも圧倒される。
なんといっても、取材に四か月半をかけたという、昔のサーカスの裏事情が新鮮だ。たとえば団員たちの身分による厳しい待遇の差。サーカス列車の車両の順番はヒエラルキーそのもので、前が裏方たちの貨車なら、後ろは、パフォーマー、興行主といった格上の者が乗る。食事をする場所も裏方とパフォーマーとではきっちりと仕切られる。
みずからも熱心な動物愛護運動家である著者が強調したかったのは、動物たちの過酷な運命ではないか。原題の『象に水を』には、動物たちへの深い愛惜の念がこめられていると思う。