ちょっと古かった
★★★☆☆
「新しいジャンルに夢をかけた作家たちの熱気あふれる傑作を集大成!日本SF草創期の昂奮が、いま甦る!」とうたわれているとおり、1957〜1971年にかけての短編が収録されています。
『処刑』(星新一/著)罪を犯した人間は、できるだけ苦しまなければならない。男は処刑のための星に送られ、水を得るため、爆発する可能性のある”銀の玉”のスイッチを押す。生か、死か、選ぶのは自分自身。
『時の顔』(小松左京/著)二千年未来の世界。治る見込みがない奇病に冒された幼なじみ、カズミの病の根源を探るため、僕は江戸時代へ旅立った。時間局駐在員の助けを借りて、カズミの出生の秘密を探る。事実を知った僕は、なぜこれほどまでカズミを助けたいと願うのか、その重大な理由をも知ることになる。
『決闘』(光瀬龍/著)宇宙船操船科のシュウは、同じ最上級生である仲間とともに、他の科の学生や後輩に対して、尊大な態度を取っている。市経営科一年のオキという学生に目をつけたシュウたちは、いちゃもんをつけてオキを死の決闘に誘う。
『通りすぎた奴』(眉村卓/著)全国学校図書館協議会の集団読書テキストにも収録されている本作は、後味の悪さが子どもに不評です。が、集団心理の恐ろしさを学ぶ教材としてはいいかも。
『カメロイド文部省』(筒井康隆/著)地球型惑星カメロイドで小説を書くことを期待されていた私は、用意していた話が全て「不謹慎」だったため、書けるものがなく、依頼を断って帰ろうとするが・・・。
初刊が『ベトナム観光公社』とのことですが、ベトナムがこんな国だったら大変。
『虎は目覚める』(平井和正/著)乱暴者が遺伝子の上で完全に排除された世界で、一人の狂った”虎”が現れた。”虎”は何人もの人を殺して回っているという。久しぶりに地球へ戻った”ぼく”は、妻が世話をしている、ダニーという少年が野蛮だと思うが、ついうっかり熱線銃を置きっぱなしにしてしまう。
『両面宿儺(りょうめんすくな)』(豊田有常/著)「両面宿儺」に非常な関心がある金森茂は、不思議な縁で飛騨・高山市へと向かう。町中で、もやの中に西洋の建物や、人々の幻を見るが、それは「両面宿儺」復活の前兆であった。「両面宿儺」とは何か、歴史を紐解きながら、西洋礼賛へ疑問を投げかけている。
『過去をして過去を−』(福島正実/著)ヒモンヤはテレポーターを使い、突然の災害から逃れ、九死に一生を得ることができた。しかし、気がつくと百年前にタイムスリップしてしまっていた。タイムスリップの余波で過去を変えてしまったヒモンヤは、慌てて現代に戻るが・・・。
『さまよえる騎士団の伝説』(矢野徹/著)日本人のチアキは、金髪で十九歳の美しい女性Hと共に、〈精霊の騎士団〉の謎を解くためドイツの山村へ向かう。夜、不思議な角笛の音色が響くと、Hが消えてしまった。
『カシオペヤの女』(今日泊亜蘭/著)カシオペヤに並々ならぬ関心を持っていた麻知子が死んでしまった。ただの女友達だと思っていたのに、受けたショックはまるで恋人に先立たれたよう。彼女との出会いを振り返るうち、雷に打たれて真実を思い出す。
『イリュージョン惑星』(石原藤夫/著)”クリスタル惑星”で起こったとしか思えない盗難事件に対し、”ピーコック星人”が犯罪を自白した。真相を探るべく、ヒノとシオダが調査に向かう。事件の真相を解く鍵は、相対性理論。
難しすぎてさっぱり分かりませんでした。
『赤い酒場を訪れたまえ』(半村良/著)病のため自暴自棄となった私は、十年以上前の知り合いであるAに出会った。Aに誘われるまま彼の生家を訪れ、そこで見たものは昔の知り合いが石化した姿だった。すっかりおびえる私に、Aは石人病について話す。
『X電車で行こう』(山野浩一/著)幽霊電車が向かう先を予測できてしまう俺は、会社もクビになり、ひたすら幽霊電車を追いかけてしまう。鉄道路線の一筆書きを題材に書かれた話。
『五月の幽霊』(石川喬司/著)ぜんぜん分かりませんでした。ストーリーも追えませんでした。
『わからないaとわからないb』(都筑道夫/著)理屈を実行に移す男、和地信彦は、自分が生まれる前の過去へ戻って父親を殺害したらどうなるか考えていた。タイムマシンを開発した友人の恭一郎と共に過去へ旅立ち、恭一郎の父親を殺してみようと考えるが・・・。
日下三蔵、星敬、山岸真、北原尚彦四氏の巻末座談会あり。
読後にもやもやした何かが残る作品が集められているように思いました。
戦後日本SFを眺望する一大叢書、ついに刊行開始
★★★★★
■戦後の日本SFは、1957年5月の同人誌『宇宙塵』(柴野拓美代表)創刊、さらに1959年の『SFマガジン』(早川書房、福島正実編集長)創刊で大きく広がりを見せ、星新一、小松左京、光瀬龍、眉村卓、筒井康隆、平井和正、矢野徹、半村良などが次々に作品を発表して本格的ブームの土台を築いたのだった。つまりSFは半世紀の歴史を刻んだのである。
■本書は、戦後日本SFを全6巻で眺望する読書界待望の叢書の第1巻。四六判ハードカバー2段組で各巻400頁超、年代順に主要作家の代表短編1作を収録し、全巻完結の暁には約80名の作家が網羅されるという壮観な一大企画である。
■編者の日下三蔵氏は、1968年生まれのSFミステリー評論家にしてフリーの編集者。日下氏は『日本SF全集・総解説』(早川書房)と言う架空小説全集の解説書を2007年秋に刊行しており、本書はその本編という意味合いも持つのである。
■出版予告から刊行まで1年以上たち、ファンをやきもきさせた本書だが、現代有数の大衆小説の読み手である日下が編んだ作品集が面白くないわけがない。刊行早々増刷が決定されたと聞く。ご注目を!